Liquid Tension Experiment「2」: John Petrucci 52歳。そのフルポテンシャルを堪能できるジャム的プログレメタルのセカンド!
by 関口竜太 · 2019-07-12
おはようございますギタリストの関口です!
本日7月12日はDream TheaterのギタリストJohn Petrucci氏の52歳の誕生日です!おめでとうございます!
去年の誕生日にはジョンのソロアルバムを記事として取り上げたのですが、今見返すとプログレメタルをインストでやることの難しさについてなかなか熱く語っていました。
John Petrucci「Suspended Animation」: 51歳。ストイックで孤高な男が築き貫いたプログレメタルというジャンル。
本日は誕生を記念してこちらのアルバムをご紹介していきたいと思います。
Liquid Tension Experiment 2 / Liquid Tension Experiment
Liquid Tension Experiment(以下:LTE)は、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド。当時のDream Theaterのメンバーを中心にサイドプロジェクトとして結成されたセッション・インストゥルメンタルをメインに扱うバンド。
経緯
速弾きを主体にしたヘヴィメタルを専門に扱うレーベル、Shrapnel Recordsの創設者Mike Varneyがプログレッシブ・ロックを専門とすべく立ち上げたMagna Carta Records。
代表的なバンドとしてはShadow GallaryやEnchant、Oz Noy、Kansasなどが有名ですが、LTEや各プレイヤーのソロ作品を担当するレーベルとしてSteve StevensやBelly Sheehanなどもこのレーベルからアルバムをリリースしています。
そのMagna Carta Recordsよりプログレッシブ・メタルのインストゥルメンタル、スーパーグループという案を打診されたMike Portnoyは、兼ねてより共演を希望しDream Theaterにも誘いながら一度は断られたJordan Rudessを今一度スカウト。今度は成功しました。
ベーシスト/スティック奏者にはKing Crimson、Peter Gabrielバンドなど大御所バンドやプロジェクトで活躍するTony Levinが参加。
最後のギタリスト枠として当初はDimebag Darrell(Pantera, Damage Plan)やSteve Morse(Deep Purple)、Jim Matheos(Fates Warning)などが候補に上がりましたがいずれもスケジュールが合わずお鉢が回ってきたのが本日の主人公John Petrucci。
結成デビューの98年にはDream Theater率1/2でしたが、その後にジョーダンが正式にDream Theaterへ加入したことで結果3/4がDream Theaterという実にファミリー感の強いバンドへと成長しました。
メンバー
- John Petrucci – Guitar
- Mike Portnoy – Drums
- Tony Levin – Bass, Chapman Stick
- Jordan Rudess – Keyboard
楽曲紹介
- Acid Rain
- Biaxident
- 914
- Another Dimension
- When The Water Breaks
- Chewbacca
- Liquid Dream
- Hourglass
98年にリリースされたデビューアルバム「Liquid Tension Experiment 1」では「Paradigm Shift」、「Kindred Spirits」、「Universal Mind」など後々も演奏される代表曲が生まれる一方、それらも込みでジャムセッション感が非常に強い作品となりました。
これだけの超絶プレイヤーが集まったのですから、そのセッションを収めたアルバムというのはプログレの歴史でも価値ある一枚となりましたが、対して「2」ではよりキメの多いアンサンブルが特徴となっています。
#1「Acid Rain」は当バンド、Dream Theater、またマイクのソロプロジェクトMike Portnoy’s The Shattered Fortlressでも演奏される大人気の一曲。起承転結がはっきりしている上で終始息をつかせぬ超絶技巧、それでいて思わず口ずさんでしまうほどキャッチーな造りという欲張りセット。この曲のコピーを演奏するファンも多いです。
#2「Biaxident」は後に「Six Degrees Of Inner Turbulence」を想起させるイントロのピアノが印象的深いジャズムーディなバラード。ジョンのアダルトなソロとピアノソロとの掛け合いとで肩の力を抜いた4人の実力を味わうことができる一曲。
ジョーダン担当の小曲#3「914」を超えると#4「Another Dimension」、#5「When The Water Breaks」という超プログレメタルが二曲続けて現れます。
前者#4はヘヴィな刻みに、いくつかのテーマをシーンに沿ってアプローチしていく斬新な構成。アコーディオンをリードに添えるケルト的一面の他、ラストのヘヴィメタルリフではジョンのワーミーペダルがシャウトのように暴走しマイクの雄叫びが聞けるほど情熱的でエキゾチックな一曲。
後者#5はベイビィムードなイントロから、「Metropolis Pt.1」のようなスリリングな曲展開を17分に渡って堪能できるこれぞプログレメタルの一曲。個人的にはこの曲が一番好きでクリエイター視点で聴いてみてもアイディアや考察の詰まった名曲です。
King Crimson的側面を見れる#6「Chewbacca」ではRobert Frippが関わってる?と思わず口にしてしまいそうな中盤のボトムパートが印象的。そこからパーカッシブなセッションを経てヘドバンまで持ち込む技量とケミストリーはこの4人ならでは。ここでもジョンのワウペダルリフから流れるソロがベストワークの気持ち良さ!
終盤はシンセフィーチャーの#7「Liquid Dream」とアコースティックな#8「Hourglass」という美しいバラードを二曲配置し穏やかな締め。
最後に
ジョンが参加できなかったLiquid Trio Experiment名義の実質3rdアルバム「Spontaneous Combustion」以降作品は出ていませんが、ライブも含め4人のスケジュールが合えば再結成もありえると明言されているだけに今後もファンとして楽しみなプロジェクトです。
マイク脱退後、近年は楽曲をシンプルな方向性へと切っているDream Theaterですがこのアルバムを聴くと改めてずば抜けたポテンシャルの高さを思い知らされます。
そしてJohn Petrucci氏の生誕をお祝いするとともにまた一年健康に素晴らしい音楽を作っていただきたいと願っております!
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タグ: プログレッシブ・メタル米プログレDream TheaterJohn PetrucciJordan RudessKing CrimsonMike Portnoy
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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