Procol Harum: ユーミンにも深く影響を与えたプログレッシブ・ロックの始祖!これを聴くことでJ-POPとプログレの親和性が濃くなる!
by 関口竜太 · 2019-07-09
おはようございます、ギタリストの関口です。
昨日は深夜まで動画の撮影を行なっていたため若干睡眠不足なのですが、なんとか気力を保ってブログを書いております。
今日は、先日御茶ノ水で買ったProcol Harumのデビューアルバムについて書いていきます。
Procol Harum / Procol Harum
Procol Harum(プロコル・ハルム)はイギリスのロックバンド。1967年にデビューし、まだ名前もないプログレッシブ・ロックの先駆け的存在となります。1977年に解散をするもメンバーの死をきっかけに90年代に再結成、現在でも活動が続いています。
売れないR&B時代と400万枚売れた「青い影」
Procol Harumの名はプログレに詳しくなくても比較的多くの人に認知されていて、そのさえたる要因となるのがデビューシングルである「A White Shade Of Pale (邦題:青い影)」です。
元は60年代初めに活動していた英国のThe Paramounts(パラマウンツ)というR&Bバンドでしたが、Rolling Stonesのミック・ジャガーなど著名なミュージシャンに支持されておきながら大きなセールスを上げることができませんでした。
唯一、全英で35位のヒットを記録した「Poison Ivy」も、そもそもがアメリカの黒人デュオJerry Leiber and Mike Stollerのカバーであったためバンドオリジナルでの手柄というわけでもなく。なんなら彼らを絶賛していたRolling Stonesも「Poison Ivy」のカヴァーをしていますし、人の話によればそっちの方がかっこいいという始末です。こうなると「ミック・ジャガーが絶賛」という言葉の信憑性をも薄まってしまう気がするのは僕だけでしょうか。
ともあれThe Paramountsは1966年に解散します。
バンドの中心メンバーであったピアノ/ボーカルGary Broocker(ゲイリー・ブルッカー)は、当時のプロデューサーからの紹介でKeith Reid(キース・リード)という詩人に出会い、楽曲を共作することになります。この音楽家と作家の共作スタイルは後にKing Crimsonにも受け継がれ、現代では一般的な手法となっている他、日本でも辻仁成さんやクリープハイプの尾崎祐介さんなど一人兼役のアーティストも存在します。
ちなみにバンド名の由来は諸説ありますがラテン語で、プロデューサーの飼い猫の名前をもじったもの。意味は「Beyond these things=あらゆる物事を超えて」。
作家との共作以外にゲイリーが打ち出した新たなバンドのスタイルとしてダブルキーボードというものがあり、バンド結成に当たってオルガニストであったMatthew Fisher(マシュー・フィッシャー)を新たにメンバーとして加えています。
そうしてリリースされた「青い影」は全世界で400万枚の大ヒットを記録。イギリスではチャート6週連続1位、アメリカでも6位。当然日本でも知られる名曲となります。
日本人によるカヴァーも多数存在し中でも最も有名なのは、松任谷由実さんがProcol Harumと直々にコラボをしたバージョンでベストアルバムにも収録。
ユーミンは日本で数々のライナーノーツを執筆している大貫憲章さんと早くから知り合いで、自宅に招いた際大貫さんからピアノで「Magdalene」をリクエストされたことがあるとか。それがきっかけかどうか、荒井由実時代のラストシングル「翳りゆく部屋」はProcol Harumからの影響が伺えます。
松任谷由実40周年記念ベストアルバム 日本の恋と、ユーミンと。 (通常盤)
アルバム参加メンバー
- Gary Brooker – Vocal, Piano
- Matthew Fisher – Organ, Vocal
- Robin Trower – Guitar, Vocal
- David Knights – Bass
- B.J.Wilson – Drums
- Keith Reid – Lyrics
なお以上のメンバーは1stアルバム時のものであり、オリジナル盤では未収録となった「A White Shade Of Pale」ではBobby Harrisonというドラマーが担当しています。
楽曲紹介
- A White Shade Of Pale
- Consquistador
- She Wandered Through the Garden Fence
- Something Following Me
- Mabel
- Cerdes (Outside the Gates Of)
- A Christmas Camel
- Kaleidoscope
- Salad Days (Are Here Again)
- Good Captain Clack
- Repent Walpurgis
代表曲#1ですがリリース当初のイギリス盤には未収録です。アメリカ盤をリリースする際に初めて収録されており現在日本盤にはほぼ間違いなく収録されていますが、Apple Musicなどストリーミングサービスは初期イギリス盤準拠のため収録されていません。
#1については先述させていただいた通りですが、オルガンによるアプローチでそれがプログレの始祖であると位置付けていいと思いますし、当時のことを思えばここから影響を受けるのは当たり前と言うべき名曲です。
ですが僕がこのアルバムで特筆したいのは本来のオープニングナンバー#2「Consquistador」です。この曲のブリッジ、どこかで聴いた感じしませんか?
これ斉藤和義さんの「やさしくなりたい」のサビなんですよね!この曲もジャケットも60年代〜70年代を思わせる歌謡曲テイストをテーマにしているところから斉藤さんによる意図的なものを伺わせます。
なお洋楽方面ではTransatlanticの「Kaleidoscope」(アルバムタイトルも!)のボーナスディスクにてMike Portnoy歌唱によるカヴァーが収録されています。イントロはProcol Harumがライブで行う際のアレンジですが、「征服者」という邦題のイメージにマッチするようなヨーロッパ軍歌っぽい感じがたまらなく好きです。
プログレの始祖、とは言えまだThe Moody Bluesがメロトロンに手を付け出した時代ですから音楽性については手探りであったに違いなく、意図的に古く思わせているような#5「Mabel」などは取り分け時代を感じさせます。
アウトロで明確なエンドを設けずにフェードアウトで終わる曲もありロック新時代はここからもう少しだけ先のお話。
特に1968年リリースの2ndアルバム「Shine On Brightly」から一気にプログレッシブさが増すので僕はそこが大好きなのですが、それはまた別の機会にお話したいと思います!
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タグ: 英プログレProcol HarumTransatlantic
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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