Jordan Rudess「Wired For Madness」: プログレだけに留まらない多彩なアプローチで翻弄する魔導師、2019年最新アルバム!
by 関口竜太 · 2019-07-06
おはようございます、ギタリストの関口です。
相変わらず空はどんよりで天気予報を見てもお日様マークがまるでない状態…でも昨日は綺麗な夕焼けが姿を現しニュースにもなりましたね。
そんな美しい景色を今日も期待してプログレの紹介をしていきます。
Wired For Madness / Jordan Rudess
Jordan Rudessはアメリカのキーボディスト。1999年よりUSプログレッシブ・メタルバンドDream Theaterの三代目キーボディスト。
来歴
9歳でアメリカ音楽学校の名門ジュリアード音楽院に進学しクラシックを学び始めたジョーダン。その時点で到底人並みじゃない感性と理解力を持っていたことはお察しですが、1956年生まれのジョーダンにとって、大学でクラシックを学んでいたその時期はプログレッシブ・ロックの黎明期でもありました。
Emerson, Lake & Palmerの「Tarkus」を聴いてプログレに興味を持った彼は(当時はプログレッシブ・ロックというジャンルは確立されていませんが)、その後クラシックやジャズ以外のアプローチも学んでいくようになります。
ジョーダンがミュージシャンとして活動を開始したのは1980年。AOR(「Album – Oriented Rock」…アルバムを一つの作品とすることを目的としたロック)バンド、Speedway Blvd.のキーボディストとしてデビューしたのが始まりでした。
ソロアルバムの初出は1988年、翌年1989年にはDream Theaterがデビューをします。
1994年にキーボードマガジンの「Overall Best Keyboardist」部門において2位を獲得するとプレイヤーの間で注目を浴びます。Dream Theaterにはそのころのミニアルバム「A Change Of Seasons」から誘いがありましたがジョーダンは同じく誘いのあったDixie Dregsのツアーに同行。
その後、Dream TheaterのMike Portnoy、John Petrucci、King CrimsonのTony Levinと共にインプロビゼーションを主体にしたプログレメタルバンドLiquid Tension Experimentを結成し、Jordan Rudessはプレイヤーならずとも多くのプログレファンに認知される存在となります。
1999年、Derek Sherinianの後任としてDream Theaterに加入。リリースした「Metropolis Pt.2: Scenes From A Memory」が大ヒットした他、とりわけ「The Dance Of Eternity」においてのキーボードワークなどジョーダンによる功績は大いに評価されます。以降Dream Theaterは12年に渡り黄金期を迎え、Mike Portnoy脱退後はバンドの左脳的役割を担っています。
アルバム参加ミュージシャン
- Jordan Rudess – Vocal, Keyboard
- Marco Minnemann – Drums
- James LaBrie – Vocal
- Vinnie Moore – Guitar
- Guthrie Govan – Guitar
- Joe Bonamassa – Guitar
- John Petrucci – Guitar
楽曲紹介
- Wired For Madness – Part 1 (#1〜#3)
- Wired For Madness – Part 2 (#4〜#10)
- Off The Ground
- Drop Twist
- Perpetual Shine
- Just Can’t Win
- Just For Today
- Why I Dream
本作は4年ぶり15作目のソロアルバム。ジョーダン曰く「コンセプトアルバムではない」当アルバムですが、それでも中盤以降までタイトルトラックである「Wired For Madness」が全体を彩るファクターとして光ります。
彼の代表作「The Road Home」や「Rhythm Of Time」をフォローアップしたような33分に渡るプログレッシブな大作ナンバーは一聴の価値ありです!
「Wired For Madness – Part 1」
SEとファンキーなシンセベースから幕を明ける#1「Bring It On」。物語の序盤はジョーダンの自己紹介的プログレインストで、ヘヴィなギターとの絡みはLTEを彷彿とさせます。また10曲に渡る組曲のハイライト的一曲でもありVinny Mooreのインテリジェンスなギターソロも光ります!
#2「Out Of Body」にてキーボードソロパートを経由すると、#3「Lost Control」ではピアノとジョーダンの渋い声が響き渡るボーカルパートに突入します。
ここまでが12分近くに及ぶパート1となりMVが公式配信中。
「Wired For Madness – Part 2」
再びロボットを思わせるSEで再開。どうにもDream TheaterのThe Astonishingで何かヒントを得たような雰囲気を感じ取れ、完璧すぎるキーボディストにも成長があることを思わせます。
#5「The Other Side」ではパート1よりもプログレッシブに、Keith Emersonを思わせるキーボードワークが穏やかかつ彼に対する敬意を感じさせます。
続く#6「Cosmic Chaos」#7「Angles In The Sky」はボーカルパート。オーケストラクラッシュなども駆使した荘厳なアプローチにも余念がなく、キーボーディスト一人とは思えない「マジシャン」の片鱗を見せられます。
#8「I’ll Be Waiting」や#10「Infinite Overdose」で担当する女性ボーカルの詳細は不明ですが(調べなくては!)#8はバンドサウンドを意識したミュージカルバラードとなっています。
加速していくテクニカルなピアノワークに怪盗でも現れそうなベガス調のジャジーさが漂うインスト#9「Human Kaleidoscope」。つくづく彼の音楽的バックグラウンドの広さに圧倒されるのですが常に豊かな遊び心を忘れない姿勢と技量には驚かされます。
#10「Infinite Overdose」ではDream TheaterのボーカリストJames LaBrieがゲストとして登場。最後まで待たせてようやくという感じなのでインストパートの多い本作ではインコヒーレントというか、少々贅沢な使われ方ですが今やプログレメタルボーカルの大御所、大作をしっかり締めてくれます。
以降はジョーダンの趣向に沿った単発楽曲が並ぶのですが、ジョーダンが歌うピアノバラード#11「Off The Ground」#15「Just For Today」やゲーム音的なイントロを持ったお得意の変幻自在インストナンバー#12「Drop Twist」、Allan Holdsworthを彷彿とさせる90年代ジャズフュージョン的な#13「Perpetual Shine」などどれもバリエーションが非常に豊か。
#14「Just Can’t Win」ではこれまたアメリカ的というかジョーダンのブルージィな部分を垣間見れる一方で、流れるほどスムーズなJoe Bonamassaのギターソロも素晴らしいです。
ラスト#16「Why I Dream」はボーカルも加えたプログレッシブなハードナンバーによるフィナーレ。ギターとキーボードの掛け合いソロも聴きどころですが、終始キーボーディストに転身したSteve Vaiとでも言うべき圧倒的な世界観で引き込んでくれる1時間です。
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タグ: プログレッシブ・メタル米プログレDream TheaterJohn PetrucciJordan Rudess
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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