King Crimson「Red」: 全盛期と名高い第3期クリムゾン!「泣けるプログレ」の名盤。
by 関口竜太 · 2019-07-04
おはようございます、ギタリストの関口です。
歯の治療から2日経ちまして、まだ若干痛みます。縫合した箇所がズキズキ痛むというよりは顎関節症みたいな関節の痛みに似ていて、一定時間ごとのロキソニンが神に思えてきます。
それでも僕は抜歯の際骨を削るなどしなかったので腫れはほとんどないのですが辛い人は本当に辛いんだろうなと思いますね。多分泣けるほど痛い。
「泣ける」といえば、ブログを書いているとアクセス解析や、何を検索して僕のブログにたどり着いたかなどが気になり毎日チェックしています。
大体はDream Theaterを初めプログレバンドの名前からとかApple製品に関するところからとか、あと意外にも「実家 東京 才能」というキーワードで来てくれる人も多いです。
そんな中以前見つけたのが「泣けるプログレ」というキーワード。
その当時でもそういった記事を書いた覚えなかったのですが探しているうちに僕のブログへたどり着いたのでしょう。何も用意してなくてごめんねという気分になりました。
というわけで本日は泣けるプログレアルバムを1枚紹介していきます!
Red / King Crimson
Red: 40th Anniversary Series (Wdva)
King Crimsonはイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。70年代UKプログレの最盛に貢献しその頂点の君臨した五大プログレバンドの一角。現在でも来日公演が行われています。
全盛期の第3期メンバー
1stアルバム「In The Court Of The Crimson King (邦題:クリムゾンキングの宮殿)」は今から50年前のアルバムとなりますが、当時でThe Beatlesのラストアルバムを抜き去りイギリスならずとも全世界に衝撃が走りました(僕は生まれてませんが)。
そんなKing Crimsonにとっての1stアルバムは間違いなく音楽史に残る名盤なのですがKing Crimsonのファンが思う全盛期像は、そこから3年後の1972年から始まる3年余りの「インプロビゼーション期」、通称「第3期クリムゾン」と呼ばれる時期。
Yesから獲得したBill Bruford(Dr)、リーダーRobert Frippの旧友であり後にAsiaやU.K.でも活躍するJohn Wetton(Vo, Ba)の3人を中心に多少のメンバー変遷も繰り返したこの時期はKing Crimsonという軸は強固になりつつも楽曲、演奏両面でのクオリティが高い時期でした。
メンバー
- Robert Fripp – Guitar & Mellotron
- John Wetton – Bass & Vocal
- Bill Bruford – Drums & Percussions
ゲスト
- David Cross – Violin (“Providence”)
- Mel Collins – Soprano Sax (“Starless”)
- Ian MacDonard – Alto Sax (“One More Red Nightmare”,”Starless”)
- Robbin Miller – Oboe (“Fallen Angel”)
- Mark Charig – Cornet (“Fallen Angel”)
- ノンクレジット – Cello (“Red”,”Fallen Angel”,”Starless”)
楽曲紹介
- Red
- Fallen Angel
- One More Red Nightmare
- Providence
- Srarless
全5曲40分弱。CDが普及する前のレコードの時代ではA面とB面を使ってもこの40分がギリギリの範囲でした。今のCDで例えるなら79分58秒くらいの感覚だと思っていいです。
それだけ凝縮された時間に内包した本アルバムでインプロビゼーション(つまりアドリブ)要素を中心とした楽曲作りは無謀だとも思ってしまうのですが、そこは天才であるフリップの手腕としか言えません。
過去のアルバムに参加したゲストの中からベストメンバーとも言うべき管楽器やヴァイオリンのシンフォニックパートとの絡みも嫌味なく、全体を通し非常に美しい出来となっています。
第3期クリムゾンにとってラストアルバムとなる本作は、タイトルナンバーである#1「Red」のクリムゾンならではの荒々しいギターリフから幕を明けます。この辺りは1973年「Larks Tongues’ In Aspic (邦題:太陽と戦慄)」の流れも汲んでいると個人的には感じます。
#2「Fallen Angel」では珍しくメロディックなクリムゾンが聴ける一曲。アコギのハーモニクスとメロトロンが人の心の奥に眠る切なさの湧泉を刺激します。
#3「One More Red Nightmare」は#1のテーマを兼ねたようなメタリックなナンバー。手拍子なども加えたリズムセクションがなんとも心地よく、ひたすらダークを思わせる本作においてノリの良さは随一。終盤のシャッフルやイアンのサックスソロも光る名演です。
曲が進むに連れその時間も徐々に長くなるのが「Red」の特徴でもあります。#4「Providence」は8分に及ぶインプロ期を象徴するかのようなインストナンバーですがこれも終盤においてトリオの絡みが秀逸。
「泣けるプログレ」、Starless。
そして若干忘れかけていた「泣けるプログレ」の真骨頂と言えるのがラスト#5「Starless」。
この曲を紹介する前に「第3期クリムゾン」の終末をお話したいと思うのですが、第3期のラストアルバムとなる本作でKing Crimsonは初めての解散を経験します。
それだけこのバンドでのメンバー仲はひどかったらしく、アルバムの評価とは相反するようにバンド自体は冷え切っていました。それは一見仲良さげに集合しているジャケットワークすら、3人が顔を合わせたくないという理由から別撮りを行い後で合成したという話が残っているほどの冷え切りぶりです。
そうした事情を踏まえ、解散前のラストとして聴くことになるこの「Starless」を追っていきましょう。
ライドとメロトロンで静かに入っていく、このまま闇に消えていってしまいそうなイントロがたまらなく切ない。ウェットンの叙情的なボーカルが魂に呼応する歌メロ。3人がどんな気持ちでこの曲を最後に収録しようと思ったのかそれはわかりませんが理屈だけではない人と人の間にある「影」を垣間見れる一曲。
4:30〜はフリップのギターソロに入りますが、これが僕がこの曲を知ったきっかけであり、テレビで爆風スランプのパッパラー河合さんがこのギターソロの触りを弾いたときでした。
河合さん「テンテテテン、テンテテン…とひたすらこんな感じ。でも最後にバンドがズバン!って入った時、涙が出たんだよね」
もうね、その通りです。ここなんですよ泣けるポイントは。
3分以上に渡り進行する不規則なソロこそこのバンド一度目の終末であり、メンバー間が抱えた星のない闇なのです。そこからバンドが入った時、闇に一際強く光る光源を見て「あ、このバンドは終わるんだ」という壮大で悲壮感溢れるエンディングを痛感させられるのです。
後半でのイアンのサックスソロも1stアルバムの「21st Century Schizoid Man (Including Mirrors)」を彷彿とさせそれがまた泣ける。そして最後に歌もなく言葉もなく演奏仕切ってゆっくり消えていく様が実にKing Crimsonらしい。
なお俳優の高嶋政宏さんはこの曲に深く感銘を受け、自身の音楽活動の際には「スターレス高嶋」と名乗っているのはあまりに有名な話。とことん堕ちたいときこそ聴いてほしい、きっとどこかで泣ける瞬間が訪れます。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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2件のフィードバック
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2020-07-28
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