Dream Theater「Falling Into Infinity」: 商業戦略に揺れた不安定期は梅雨の如し(試聴あり)
by 関口竜太 · 2019-06-21
おはようございます、ギタリストの関口です。
朝から梅雨らしいじめじめした気候ですね。だんだん夜も寝苦しくなって来ました。
まだエアコンまで付けるような時期じゃないなと思っているとギター弾いてるだけで汗がダラダラ流れてくるので目測の数字でなく体感を頼りにうまく使った方がいいと思います。
それでもやっぱりエアコンはもったいないなという場合は扇風機だけでもかなり涼しくなるのですが、オススメはDCモーターの扇風機です。
日立 扇風機 DCモーター リモコン付 風量6段階 やさしい微風(うちわ風) タッチキー操作 HEF-DC500
普通、パワーのある交流のACモーターを使うところ直流のDCモーターを搭載した扇風機。 非常に静音で風量の段階が多いことがメリットです。
なので寝るとき、扇風機の音が気になるということもないですし、そよ風みたいに程よい風量で一晩中付けていられるので、寝ている間に体を冷やすこともありません。
また本体価格はACに比べて張りますが消費電力も半分ほどに抑えられるので非常にエコです。じめじめしたこの夏、扇風機の買い替えがある場合は検討してみるといいと思います!
では、じめっとした季節のプログレ紹介です。
Falling Into Infinity / Dream Theater
Dream Theaterはアメリカのプログレッシブ・メタルバンド。
アルバム参加メンバー
- James Labrie – Vocal
- John Petrucci – Guitar
- Mike Portnoy – Drums
- John Myung – Bass
- Derek Sherinian – Keyboard
商業戦略に揺れた不安定期
去年にも「梅雨入りは突然に」と題して本作収録の「Trial Of Tears」をご紹介しましたが改めてアルバムそのものをご紹介します。
1995年にミニアルバム「A Change Of Seasons」をリリース、ツアーも終了して勢いづき4thアルバム製作に取り掛かったDream Theaterでしたが、当初予定としてあった「2枚組アルバム」という案をセールスが期待できないという理由でレーベル側から跳ね除けられます。
さらにヒットメーカーである作曲家との共同作業を強いられリーダーであったMike Portnoyは反発。当時のDream TheaterはMike Portnoyによる発案と企画が重要な核でしたが、その窮屈さに不満はかなり大きかったとされます。しかもその頃マイクはアルコール依存にも苦しんでいた時期。
またレーベル側の意見にJames LaBrieが賛同したりJohn Petrucciが指示通り曲のリテイクに飛んだりとバンド内の動向もバラバラ。セールスを期待するレーベル側と思ったようにできない不安定なバンドという構図になりました。
マイク曰く「妥協に妥協を重ねたアルバム」。
繊細なサウンドを支えたムードメーカー
そんな不安定を象徴するかのようにタイトルにも「Falling Into Infinity」とありますが、サウンド面もとても繊細で緻密。
前作「Awake」までのパワフルなプログレメタルから一転、キャッチーな楽曲が並び曲のサイズも比較的コンパクトに仕上げられます。
本作のサウンドのように繊細なバンドを支えたのは当時のキーボディストDerek Sherinian。Dream Theaterへの参加はミニアルバム「A Change Of Seasons」からでしたがフルアルバム参加はこの「Falling Into Infinity」が最初で最後。
ですが本作での功績は大きく独特なリードサウンドやプレイイングはもちろん、ムードメーカーとしての彼の人間性はどん底のバンドを照らす数少ない光でした。
その後、Dream Theaterはオフィシャルブートレグレーベル「YtseJam Records」にて「Falling Into Infinity Demos 1996-1997」として本来あった構想の2枚組アルバムをデモ盤という形で発表しています。
楽曲紹介
#1「New Millennium」
アルバムのオープニングを飾ったマイク怒りの楽曲その①。John Myungのチョップマンスティックによる直線上のベースラインが印象的です。歌詞はマイクによるレーベル批判が覗く皮肉的一曲。
#2「You Not Me」
元は「You Or Me」だったのを、ペトルーシが作曲家Desmond Childの元でリテイクを加えた楽曲。このデズモンドこそ、レーベル側の指示したヒットメーカーでありAerosmithやBon Joviを手がけたことで知られます。
#3「Peruvian Skies」
Metallicaの「Enter Sandman」を思わせるフェイザーリフが特徴。後半のアグレッシブでヘヴィな展開は「Awake」の延長線を思わせます。ペトルーシの乾いたディストーションサウンドもこれまた絶品。
#4「Hollow Years」
ちょっとジャズテイストな進行も孕んだアコースティックバラード。ファンの中でも人気の高い一曲で、こと2004年にリリースされたライブ盤「Live at Budokan」でのバンドアレンジとエモーショナルなソロはベストアクト!
#5「Burning My Soul」
レーベル批判を伴ったマイク怒りの楽曲その②。元は次曲「Hell’s Kitchen」と同じ曲として製作されていましたがデズモンドのテコが入り王道ハードロックらしい構成とキャッチーな造りになっています。間奏はデレクによるキーボードソロ。
#6「Hell’s Kitchen」
デモでは「Burning My Soul」のイントロ及び間奏として採用されていたものを別に作り直した5/8と6/8が基調のインスト曲。Pink Floydを思わせるアルペジオとアンビエント、そしてアドリブ感の強いギターが印象的ですが、後半へ行くに連れエモーショナルに盛り上げていくメロディ展開などとても美しい一曲です。
#7「Line In The Sand」
これも繋がるように導入して行く中盤12分の長尺曲。Dream Theaterにしては珍しくファンクを取り入れた挑戦な曲。デレクによる歪んだリードサウンドが非常に記憶に残るため、後のSons Of Apolloで「デレクが帰って来た!」と感極まったファンも多いのではないでしょうか。サビではKing’s XのDoug Pinnickが参加。
#8「Take Away My Pain」
本作にはライトなバラードが3曲も収録されていて、同じアコースティックテイストでもよりパーカッシブに仕上がっているのがこの#8。癌で他界したペトルーシの父親を悼んだ楽曲で、闘病を歌った「Another Day」の悲しいアンサーソングになります。
#9「Just Let Me Breath」
マイク怒りの楽曲その③、そしてやはり16分でパーカッシブ。ラップっぽいパートを盛り込んだのはマイクの意図するところだと思われます。LRにパンを振ったキメの掛け合いソロがDream Theaterらしい一端。
#10「Anna Lee」
ピアノの美しさにElton Johnの影響を感じさせる3曲目のバラード。ジャケットのブルーなイメージにもマッチした「このアルバムだからこそ」生まれたと言っていい一曲。
#11「Trial Of Tears」
ラストを飾る3部構成13分の大作。#6同様、Pink Floyd的陰鬱さが切に滲み出ています。歌詞の「It’s raining, raining, raining 」というのも…これも過去の記事に書きましたが本当に雨が降り注いでいるような光景を浮かばせます。作曲はマイヤング。
最後に
事実このアルバムが一番好きというファンは多く、フラストレーションの溜まる当時の製作環境においてもDream TheaterはDream Theaterなんだと思わせてくれるというのがこのアルバムの僕なりの総評であり、世論にも概ね納得です。
マイクこそ「妥協を重ねた」と言っていますがあくまでやりたいことをセーブしたという意味であり非常にハイクオリティです。
ヒットさせようとあらゆる仕掛けを盛り込んだレーベルとデズモンドの思惑がちょっといやらしくも感じられます。
結果、思ったようなセールスを上げなかったことでバンド側も「次は自由にやらせてもらう」と直談判、そして大ヒットアルバム「Metropolis Pt.2」へ繋がっていく数奇さも皮肉が効いていて大好きです笑
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タグ: プログレッシブ・メタル米プログレDerek SherinianDream TheaterJames LaBrieJohn MyungJohn PetrucciMike Portnoy
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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