Ars Nova「Seventh Hell (La Vénus endormie)」: 海外の人に日本のプログレを勧めた話

おはようございます、ギタリストの関口です。

僕はFacebookで海外のプログレロック・フォーラムや特定のプログレバンド、ミュージシャンのフォーラムに参加しています。

例えばNeal Morseがそれに当たるのですが、先日そのNeal Morseのフォーラムに参加しているフランス人のユーザーからダイレクトメッセージが届きました。

Facebookフォーラムで知り合ったフランス人からのDM


原文は一旦避けて、掻い摘んで書きます。

 

「日本のプログレでNeal Morseみたいな音楽性のバンドやアーティストはいるかい?僕は日本のゲーム音楽が好きで、桜庭統や植松伸夫のようなプログレッシブな楽曲をよく聴くんだけど、新たに開拓したいんだ」

 

それに対して僕の返事はこう。

 

「実は日本ではヨーロッパやアメリカほどプログレロックがリスナーに向けた音楽ではなく少ないんです。Neal Morseのようなシンフォニックロックも同様で、みんな海外のバンドを聴いています。でも日本人のミュージシャンにはプログレロックから影響を受けた人が多いんです。プログレバンドは少ないですが、プログレを意識した楽曲やアルバムは時々リリースされるので紹介します。」

 

こう前置きして紹介したのが、以前にも記事に書いたMr.Childrenの「深海」

Mr.Children随一のプログレ作品「深海」に込められた想いと「脱出」。

 

続けてメッセージ。

 

「これはMr.Childrenの「深海」です。「ミスチル」は、ポップな楽曲と美しい歌詞を書くことで日本では幅広い年齢層から人気のバンドです。「深海」はPink Floydを意識したようなコンセプトアルバムで、1996年、音楽活動や女性問題に苦悩していたボーカリストの桜井和寿が消えかけていた純粋な音楽への気持ちを深海とそこに住むシーラカンスに例えたものです。このアルバムは日本国内で275万枚のセールスを記録します。」

 

「ありがとう、面白いね!聴いてみるよ!」

 

とのことで一件落着。

あえてミスチルを勧めた理由


カルメンマキ四人囃子など、プログレとして日本を代表するバンドはいますが、

  • J-POPという文化の中に息づくプログレを感じて欲しかった
  • ミスチルを聴いた海外の人がどんな反応を示すのか興味があった
  • セールスで成功している作品をまずは聴かせるべきだと感じた

という理由から考えあえてミスチルを勧めました。

そのフランス人ユーザーに説明した通り、日本ではポップカルチャーにプログレは侵入しにくいです。

ですが多くのミュージシャンから話を聞くとプログレからの影響を受けていたりして、それが密かに根付いているのがJ-POPというジャンルなのだと思います。

と、このような出来事があり、僕としては自身の知識が海外の人から頼られているような気がしてちょっと誇らしく感じた瞬間でした。

今日はマニアック路線の日本のプログレをご紹介します!

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Seventh Hell (La Vénus endormie) / Ars Nova


Seventh Hell (La Vénus endormie)

Ars Nova(アルスノヴァ)は、日本のプログレッシブ・ロック/メタルバンド。

メンバー


  • 熊谷桂子(Keiko Kumagai) – Keyboard
  • 柴田伸子(Shinko Panky Shibata) – Bass
  • 半田聡(Satoshi Handa) – Guitar
  • HAZIME – Drums

概要


1983年に女性3人のグループとして結成、その後一度活動休止をするも1991年にキーボディスト熊谷桂子さんを中心に再結成します。なお、結成当初のオリジナルメンバーは現在一人もいません

再結成後はEmerson, Lake & Palmerのコピーなどを中心にライブ活動を行なっていましたが、熊谷さんの音楽性と金髪の縦カールにゴシックファッションという存在感あるスタイルを掘り下げ、オリジナル曲を製作していく過程で徐々にダークなシンフォニックメタルへと進化していきました。

そうして1992年にCDデビュー。当時はツインキーボードによる5人編成でした。その後、2002年にツインの片割れMikaさんが脱退、現在は男女混合の4人組バンドにて国内外問わず活動中。

音楽性


Sonata ArcticaやStratovarius、Helloweenといったヨーロッパのシンフォニックパワーメタルと、Dream TheaterやSymphony Xを思わせる超絶テクニックを駆使したプログレッシブなインストナンバーを演奏します。

その演奏技術はまさに日本のLiquid Tension Experimentと言った具合で、次々様相を変えるプログレッシブな楽曲展開に、クラシックや中世を思わすロンドなどの要素をふんだんに取り込んでいます。日本のV系ロックの様式美も多少影響している模様。

欧州風情を感じるプログレインスト


今日ご紹介する「Seventh Hell」は2009年にリリースされた5曲入りの現状最新アルバム。と言ってもすでに10年も前のアルバムですが…

おおまかな楽曲構成は先に述べた通りですが、ゲストとして招かれたハンガリーのボーカリストAge of NemesisのZoltan Fabianや、オランダのRobby Valentine等が参加しています。

日本のバンドながら欧州の雰囲気マシマシでテクニカルに駆け抜ける47分です。

個人的にお気に入りはラスト#5「Salvador Syndrome」

ハモンドオルガンは70年代のブリティッシュですが途中情熱的なスペインのフラメンコジャズ、アコーディオンが印象深いワルツ、荘厳なボーカルとメタルのパートもしっかり用意されていて、まるでヨーロッパ各地を旅しているかのようなめまぐるしい展開が聴ける究極のプログレメタルナンバーです!

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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