Rush「Test For Echo」: グランジ路線へシフトしたバンドの後期と時代の変遷
おはようございます、ギタリストの関口です。
週末から夏みたいに暑い日が続いてますね。おかげで5月なのに夜は冷房して寝てるし朝は暑くて目が覚めるといった具合です。
これから梅雨に入るのでまた少し落ち着きそうですが、今年も来ますね、夏が。
本日ご紹介するのは後期Rushです。
Test For Echo / Rush
Rushはカナダのプログレッシブ・ロックバンド。
メンバー
- Geddy Lee – Vocal, Bass, Keyboard, Pedal Bass
- Alex Lifeson – Guitar
- Neil Peart – Drums, Percussion
時代を追うように変化するラッシュスタイル
本場イギリスの地より離れたカナダという国で、元はハードロックバンドとして結成されたRushでしたが、1976年に先人たちに則った典型的な大作志向のアルバム「2112」にてヒットをもぎ取ります。そこから1978年リリースの「Hemispheres」まで大作路線を続けます。
「大衆向けの短い楽曲を」というレーベルの意向から1980年に発表した「Permanent Waves」によって一気にポップ路線、しかしプログレッシブなアプローチや自分たちのやりたいことを残していくスタイルによって1981年には「Moving Pictures」というさらなる成功を勝ち取ります。
コンスタントにアルバムを発表していく一方で、自分たちのサウンドに飽きやすかったとも捉えられるRushはその音楽スタイルまでもコンスタントに変化させてきました。そのスタイル変化はアルバム4枚ごとと言われています。
引用:Wikipediaより
グランジ路線の90年代
1980年〜82年までのヒットを受け、Rushが次に打ち出したのはより大衆へとすり寄ったエレクトリカルでポップな音楽性でした(黄色枠の時期)。彼らの意図した通り、バンドはさらに世間の認知度を高めセールスを伸ばしていきました。
しかし反面、往年のファンからは批判や不満も聞こえ、その代表的な意見がギターのアレックスのサウンドが埋もれてしまっているというシンセ要素を増やすが故の対価でした。
そして1989年より変換した方向性がグランジ路線です。
グランジ・ロックといえばパンク・ロックと並んでプログレッシブ・ロックを滅びさせたジャンルの一因ですがファンから批判的だった過剰なシンセ色は影を薄め、シンプルな楽曲に従来のハードロックサウンドを復刻させたのでした。
Test For Echo
NirvanaやPearl Jamといったグランジバンドに添えるようにリリースされた「Prest」を初めとする“グランジラッシュ”でしたがやはり当初ファンからは不評でした。
ですが元々のハードロックな路線に少しずつ回帰していくことで、1993年、グランジ期3枚目となる「Counterparts」の頃には楽曲こそシンプルだけどあのRushが帰って来た感じが伺えます。
そして1996年にリリースされた本作「Test For Echo」はこの時期の集大成と言える出来に仕上がりました。ダーティで愚直なギターリフはグランジ路線を踏襲したものですが一方で#1「Test For Echo」のようにコーラスを効かせた繊細なギターアルペジオも聴かれるようになります。
#5「Time And Motion」ではポリリズム的な変則リフもあり、長らくプログレにお預けを食らっていたファンからすると嬉しい楽曲です!一方で#7「Dog Years」などはまさにグランジラッシュを象徴する一曲ですがニールの痛快なドラミングが気持ちいいです!
こうしてみるとRushは時代の流れに応じて少しずつ形を変化させているバンドなのだと再認識させられました。2018年にニールが音楽から引退してしまったことで当然Rushからも脱退、寂しいラストではありますが長い歴史を追うことでこんなにも時代の流れが見えるバンドは珍しいと思います。