小林快次著「ぼくは恐竜探検家!」感想。諦めない精神と探究心、夢を持つ人は読むべし!
おはようございます、ギタリストの関口です。
小林快次さん著「ぼくは恐竜探検家!」について内容など書いていきます。
その前に、僕、関口竜太は小さい頃から恐竜が好きでそのフォルムや歴史に壮大なロマンを感じているのですが、それでも大人になってからは「恐竜とはちょっと趣味が子どもか?」と思った時期もありました。
今は全然そんなこと思わないし人の評価を気にして好きなものを抑える意味がないのでガンガン公言してますけどね!
過去に、書いたはいいけど全然読まれない(笑!)ジュラシックパークについての記事もあるのでご参照ください。
著者概要
小林快次さんは、古生物学者であり北海道大学総合博物館准教授。福井県出身。
僕が小林先生を知ったのは夏休みと冬休みに放送されるNHKラジオ「子ども科学電話相談」。
毎回4人の専門家の先生が集まり電話で小・中学生の素朴な疑問に答えていくというものなのですが、恐竜好きの子どもたちは他の分野とは一味違う、かなりマニアックに突っ込んだ質問をするためそれに全力で対応するのが小林先生。
リスナーからは「ダイナソー小林」という愛称でも親しまれています。ちなみにこの記事では「小林先生」と呼びますがこれは単に敬意を込めたが故の呼び方なので深い意味はないです。
頂上決戦とも呼べる恐竜討論が聴けるこの回は何度聴いても楽しい!
本書はそんな小林先生の化石掘りのルーツから今を辿る努力とロマンの自書伝です。ちなみにものすごく読みやすい本なので2、3時間もあれば読めてしまいます!
化石が導いた学生時代
中学生
日本でも恐竜の県として有名な福井県に生まれた小林先生は、中学生のころ所属していた理科クラブで持ちかけられた化石発掘ツアーに参加します。そこで小さいながらもアンモナイトの化石を発見し化石の魅力に取り憑かれていきます。
高校生
高校生のころにはたまたま訪れた博物館のよしみから大人の発掘ツアーにまで参加するに至り、周りの大人たちに半ば踊らされて本当に研究所のある北海道大学へ進学。
大学生
さらにアメリカの大学への留学生を探していた教授の話で留学。ご本人は勉強に関してはあまり得意ではなかったようですが(特に英語)、特別裕福でないことを理由に断ろうとも奨学金制度など断る要素も潰され、在学一年で休学しアメリカへ。
初めは話せない英語にホームシックになっていたようですが毎日がむしゃらに単語を覚えテレビから口の動きを学びリスニングを鍛え、徐々に日常会話までできるようになります。
そうして嫌がっていた留学先で遊び呆けていざ、日本へ帰るころになって「本当にこれでよかったのか」と留学期間を振り返ります。そして自分にはやりたいことがあると今度は自らの意思で渡米、地質学の研究を行なっているワイオミング大学へ入学します。
大学院
50倍という倍率をくぐり抜け恩師であるルイス・ジェイコブス教授の研究室へ進むも、元から優秀な学生が集まる空間で「勉強」と「研究」の違いを知り一度は挫折しかけます。
その中で院の友人から言われた「足りてないのは自信だ」という言葉に少しずつ突き動かされます。
「自信が足りてない」は精神論か
小林先生も初めはその言葉に綺麗事や単なる精神論と思っていたようですが、人が自信を失うとは一体どういうことなのでしょうか。
人は自信を失うと過度に自分を守ろうと予防線を張り出します。
例えば論文発表の際、多方から口数を増やし余計なことまで言う。そのせいで研究内容のテーマがボヤけてしまいます。
アマチュアのミュージシャンでもスタジオに入るなり開口一番「今日全然練習してない」という人もいます。本当はある程度練習していても不安や失敗を恐れ先手であれこれ言い訳をしてしまうものです。
自信というのはシンプル。伝えたい内容が簡潔に伝わることが肝心だと小林先生は述べています。
ハヤブサの眼で恐竜の謎に迫る!
この本の半分は小林先生の半生を語ったものですがもう半分は専門である恐竜についての考察やエピソードになります。
なお、小林先生は「ファルコンズ・アイ」の異名を持ち、化石を見逃さないと専門家の中でも有名人。アラスカやヨーロッパ、中国で多く発見されている恐竜の化石ですが、日本固有の新種となる「フクイサウルス」「フクイラプトル」「むかわ竜」を発見したのは小林先生です。
化石発掘の過酷さ
化石の発掘というのはロマンに満ちていますが、数打ち当たれるほど研究資金は用意されていません。なので前もった資料や情報や高度な予想が必要となります。
それでも必ず化石が出るとは限らないし、現地の砂漠などに滞在中のときには様々な天敵にも遭遇します。
それはハエだったり蚊だったりダニだったり、熊だったり時には人間だったり。経験談から語られるエピソードは実に生々しいです。
恐竜という優秀な生命体
そうして発見された恐竜という古代の生物。すでに絶滅しているが故に僕たち人間は、「のろまで体ばかり大きいパワー系」と思っても仕方がないことです。ですがその実、恐竜は高度に進化したすごい生命体であったと言わざるを得ません。
恐竜はおよそ2億3000万年前から6600万年前まで繁栄しました。ということは1億7000万年もこの地球上で実際に生きて種を増やしていたことになります。僕たち人間の祖先が誕生したのが約540万年前なのでその差は歴然です。
それほど優秀だった恐竜も、生物35億年の歴史の中で5回ほど訪れた「大量絶滅」という波に飲まれ姿を消します。原因はカナダの海に落ちた直径10kmほどの巨大隕石と言われています。直接的な原因かは不明ですが、巻き上がった粉塵によって地球全土に光が差し込まなくなりました。そのせいで長い冬が訪れ草木は枯れます。植物を食べていた草食恐竜が倒れればさらにそれを餌にしている肉食恐竜が滅ぶのも時間の問題でした。
もっとも、この話からわかるのは恐竜は繁栄した歴史に比べれば短期間で絶滅してしまったわけですが実際には数十万年規模で徐々に数を減らしたことになります。
絶滅こそしてしまいましたが、1億年以上にも及んで進化を続けた恐竜のフォルムというのは絶対に意味のあるもので、想像も込みでそれが解明されていくというのはロマンがあって当然ですね。
最後に
恐竜は今でも生きています。
繁栄を続けていた頃、進化の過程で身を守るため木に登ったり空を飛んだ種がいました。それらが代謝を減らすため体を小型にして大量絶滅を生き延び進化してきたのが現在の鳥です。
またワニは恐竜の直属の祖先とも言われており、恐竜のことを知るには鳥とワニを調べれば見えてくるというのが現在主流のセオリーとなります。
以前小林先生がNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演された際「あなたにとってのプロフェッショナルとは」という番組恒例の締めとなる質問をされこう答えました。
自分の未熟さを認識できる人、謙虚に他人の意見に耳を傾けることのできる人。
その言葉の真意は是非本書で確かめて欲しいと思いますが、好きなことをとことん突き詰め努力を怠らず夢を掴んだ人として、分野は違えど尊敬しているし、こういう人がいるからますます恐竜という生物のことが好きになりました。