Big Big Train「Grand Tour」: 壮大なテーマで豊かなイタリアの風景を描く、イギリスネオプログレの最新アルバム!
おはようございます、ギタリストの関口です。
昨日おとといと西日本では豪雨となっていましたが、今日は東京も朝から本降りです。夜には止むそうですがお足元お気をつけください!これから一雨ごとに暑くなりますね!
雨だけどプログレ!今月リリースの新譜です!
Grand Tour / Big Big Train
Big Big Trainは、1990年にデビューしたイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。
メンバー
- Greg Spawton – Guitar, Vocals, Keyboard, Bass
- Nick D’Virgilio – Drums, Vocals, Percussion,Guitars, Keyboard
- David Longdon – Lead vocal, Flute, Keyboards, Guitar, Bass
- Dave Gregory – Guitar
- Danny Manners – Keyboards, Double Bass
- Rachel Hall – Violin, Vocal
- Rikard Sjöblom – Keyboards, Guitar, Vocal
- Robin Armstrong – Guitar, Keyboard
メンバーは8人編成。メンバーチェンジを繰り返し、現在オリジナルメンバーはギターのGreg Spawtonのみとなります。
英国紳士的プログレとヨーロッパの風
今年の3月にアナウンスされたニューアルバム「Grand Tour」。
17、18世紀に裕福な若い男女が文化遺産に触れようとヨーロッパを旅したイギリスの風習に基づいたコンセプトアルバムです。本作は主にイタリアの街を旅します。
リリース前のインタビューでボーカルのDavid Londonは「Grand Tourは人生経験、科学と芸術、そしてそれらが生きていることの意味」とこのアルバムを位置付けていました。
楽曲
- Novum Organum
これから始まる壮大な旅についてのオープニングナンバー。グレッグとニックの共作となり、時を刻むようなオルゴールが印象的です。 - Alive
アルバムがアナウンスされたときに配信されたシングル曲。古き良きブリティッシュ・ロックのテイストを持つBBTには反面、楽曲に暗さがつきまとう印象があるのですが、タイトルにあるようにとても活き活きとしたネオプログレらしいポップなナンバー。旅に対しての前向きな想いが伝わって来ます。
- The Florentine
フィレンツェを舞台にした12弦ギター使用のナンバー。欧州の石畳ある街並みを思わせます。シンプルなアコースティックをキャンバスに各メンバーが思い思いに的確な音を這わせていく様も美しく、カントリー調のエレキやマンドリン、バイオリン、ムーグ…そして男女コーラスによるハーモニーが豊かな街へ色付けていきます。 - Roman Stone
お次はローマ。13分に及ぶ大作で、静かに紡いでいくピアノ、ストリングス、フルートらがBBTらしい王道のプログレナンバーへ導いています。7:48〜のオーケストレーションも実にGenesis的英国プログレの嗜みといったご様子。 - Pantheon
紀元前25年にローマ皇帝により建設された神殿パンテオンをテーマにした厳かなインストゥルメンタル。繊細で緊張感のあるクランチギターが印象的でテーマを繰り返しながらキーシグネチュアを切り替えていきます。 - Theodora in Green and Gold
リリース前に発表された2曲目のシングル。アルバム自体が非常に神聖なコンセプトを含んでいるので実際にイタリアへ出向かなくては生半可で語れない事項が多いのですが…ラベンナを舞台としたこの曲ではそれが顕著です。ラベンナには皇后テオドラを描いたモザイクの壁画があり、これが翠と金によって描かれていることがタイトルで示唆されています。曲は6/8によるバラードで、イントロのギターは次の曲「Ariel」にも続いていきます。
- Ariel
ここから14分超えが2曲続く挑戦的なアプローチ。本曲は8部構成で火葬がテーマの壮大なテーマです。中でも5:20〜始まる「Come Cirrus、Come Stratus」とシンガロンするパートは泣きです! - Voyager
この曲ではヨーロッパの旅路から地球を飛び出し宇宙船で宇宙へ行くという、いきなりスケールがぶっ飛びます。おそらくは物理的かつファンタジックなものではなく、精神とか悟りの境地とかそういう意味合いだとは思いますが…8:04〜から本作の聴きどころの一つであるアグレッシブなプログレインストパート。ニックのドラムは本当に素晴らしい! - Homesong
アルバムを飾るラストナンバー。「Novum Organum」のテーマも含んだフィナーレで5分という短さではありますが余韻もしっかり残し旅の終わりによる満足感を満たしてくれます。
全体的に美しいサウンドで勝負といった印象が強く、かつ時代背景から宗教色も強い風に感じます。なのでロック・プログレアルバムを期待して聴くと一部を除きあまり響かない部分もあるかもしれません。
しかしながら、すでに大物感漂う貫禄と壮大なテーマをいとも簡単に形にしてしまう度量の大きさには毎回感服してしまいます。
国際的な話でEU離脱に揺れるイギリスですが、音楽に関しては整合性の取れた欧州の風を存分に感じれるアルバムでした。オススメはとにかく「Alive」!この一曲を聴くためにアルバムを聴き進めても十分価値のある一枚です!