Dream Theater「Images And Words」: 先人へのリスペクトと継承、ヘヴィメタルを土壌とし生まれた新スタイル。

おはようございます、ギタリストの関口です。

僕は寝相がいい方でよく「死んだように寝てる」とまで評されるのですが、今朝はふくらはぎを攣ってしまい悶絶してました。おはようございます(二度目)

いつもだったら攣る前の方向に筋肉を伸ばせば後遺症もなく忘れてしまうのですが今日のは未だ歩くと痛みますね。ロキソニンの湿布ですねこれは。

さて、先日の「平成プログレベスト」記事内にて「近々書く」とお約束通り、今日はこのアルバムのご紹介です!

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Images And Words / Dream Theater


Images And Words

Dream Theaterはアメリカのプログレッシブ・メタルバンド。

アルバム概要


1992年発表の2ndアルバム。Dream Theaterがリリースしたスタジオアルバムの中で最もヒットしたと言われ、このアルバムからのシングル「Pull Me Under」はヘヴィメタル、そしてプログレッシブ・ロックというジャンルにも関わらずビルボードチャートで10位を獲得します。

プログレッシブ・メタルというジャンルそのものは1980年代にはQueensrycheFates Warningが既に実行していた事柄でしたが、この「Images And Words」にて完全にジャンルとして確立した、言わば金字塔的作品となります。

音楽に対するストイックな姿勢


しかしヒットの影には1stアルバム「When Dream And Day Unite」での反省がありました。

バークリー音楽院出身の頭脳派テクニカルバンドと銘打ったものの、プロダクションの面でうまくいかずリリースされた音源の音質は決して良いとは言えないものでした。

また、デビュー当時のボーカルCharlie Dominiciの素行の悪さや歌唱力の低さなどもあり楽曲のクオリティとは裏腹に不当なデビューとなってしまいました。

リリース後、数度のライブを終えた後にチャーリーを解雇、バンドは新たなボーカル探しを行います。そうして加入したのがカナダ出身のJames LaBrieなのですが、ソフトな声質から発せられる伸びやかなハイトーンなど歌唱力の高さ、ブレス混じりで色気のある表現力はそのルックスとも合間ってDream Theaterという大車輪を動かす歯車としてガッチリハマります。

その間、バンドもこれまで以上にストイックなリハーサルを繰り返しデビューアルバムから3年の時を経て「Images And Words」をリリースしたのです。

参加メンバー


  • James LaBrie – Vocal
  • John Petrucci – Guitar
  • John Myung – Bass
  • Mike Portnoy – Drums
  • Kevin Moore – Keyboard

楽曲紹介


  1. Pull Me Under
  2. Another Day
  3. Take the Time
  4. Surrounded
  5. Metropolis Pt.1: The Miracle and the Sleeper
  6. Under the Glass Moon
  7. Wait for Sleep
  8. Learning to Live

Pull Me Under・・・8:14

Dream Theaterのヒットを裏付ける革命的一曲。作詞は当時のキーボーディストKevin Mooreオリエンタルな雰囲気のあるイントロのギターからザクザクと刻むヘヴィメタルに変貌します。重たいファーストインプレッションをサポートするようにキーボードとギターによるユニゾンフレーズが疾走感と曲のドラマティック性を演出。

Another Day・・・4:23

重々しいOPナンバーから一転、静かでアコースティックなバラード。ギタリストJohn Petrucciの父親のがん闘病を歌った曲で語りかけるようなボーカルと感情的なギターソロから非常に人気の高い一曲。

Take The Time・・・8:21

ストレートビートとシャッフルビートを混ぜた変則的な曲でDream Theaterのポップな一面も見られます。それはGenesisやRushがなど彼らに与えた影響に対するリスペクトであり、またそのアンサーであるとも考えられます。なおこのアルバムからキーボードとギターのユニゾンフレーズが増えるためDream Theaterと言えばそんな印象が強いのですが、とりわけこの曲のユニゾンはフレーズ構築が巧みで速い割にキャッチーなのでプレイヤーたちにも人気です。

Surrounded・・・5:30

「Another Day」のマイナーなバラードに対比したポップチューン。Queenからの影響も感じさせる一方で9/8というリズム上で歌い上げるラブリエのポテンシャルの高さが伺えます。ギターソロはディレイを使ったテクニックで、実際の音数は少なく難易度も低め。

Metropolis Pt.1: The Miracle And The Sleeper・・・9:32

中盤4分以上のインターバルを要する大作プログレナンバーで次々展開が切り替わる様はKansasの「Magnum Opus」を思わせます。この曲のインストパートは3年に渡るリハーサルの中で編み出されたものでこの曲の仮タイトルこそ「Images And Words」でした。インストだけでなくボーカルパートも変拍子だらけの高難易度の曲で、この曲の歌詞から続編として作られたのが5thアルバム「Metropolis Pt.2 Scenes From A Memory(1999)」となります。

Under The Glass Moon・・・7:03

壮大かつスリリングなイントロで幕を開けるアップメタルナンバー。この曲に関してはドラムMike PortnoyとベースJohn MyungにMVPです。とにかくキャッチーでかっこいい。プログレバンドの宿命とも言える「いくつかの曲を合わせた」ような継ぎ接ぎ感もなく7分の長尺ながら一貫したテーマで突っ切るのが特徴。間奏はアルバムの1,2を争うベストパフォーマンス。

Wait For Sleep・・・2:32

ピアノ・ストリングスとボーカルのみという美しい小曲のバラード。12/8のリズムを基準としていながら10/8だったり11/8だったりと中身はすごいことに。しかしそれを感じさせないのがこの曲のすごいところです。余韻から「Learning To Live」へ繋がっていきます。

Learning To Live・・・11:30

初期のライブではおなじみの、11分超えの長尺曲。キーボードが弾く15/8のフレーズの上でリズム隊およびギターは4分を刻むという、釣られそうな変則イントロが特徴。Dream Theaterが単なるテクニカル系メタルのなんちゃってプログレバンドではないという証明がこの曲からひしひしと伝わってきます。終盤オルガンにて「Wait For Sleep」を再登場させる演出もニクい。

継承という形のオリジナリティ


先のFates WarningやQueensrycheは時期こそ違えどあくまで「プログレ+ヘヴィメタル」の融合でしたが、Dream Theaterはその実、ヘヴィメタルの中で70年代プログレを継承したスタイルです。そう考えると他のプログレメタルとは一線違うのも納得。

温故知新という言葉が似合う一方で、いざこのスタイルをやってみるとどうしてもDream Theaterの音楽性へ偏ってしまいます。

YesやGenesisなど先人たちへのリスペクトを欠かさずにヘヴィメタルを表現していくハイブリッドさと、その二つを本当に両立してしまったことこそがDream Theater最大のオリジナリティです。

なのでヒットする一方で「真似事」のような批判ももちろんあったし、デビュー当時の彼らの敬称として使われた「Rush meets Metallica」のそのRushから「メタルファン向けのプログレ」と半ば揶揄されたこともあったようですが、時代の流れで廃れたプログレッシブ・ロックの復権に貢献しまた新規参入の間口を広げたインフルエンサーとしての功績は非常に大きいです。

Dream Theaterはこのアルバムのヒットにより当時でワールドツアーを二度も行い、2017年にはリリース25周年を記念したワールドツアーで来日もしました。様々なプログレアルバムを聴いていくと確かにもう一歩深みに欠ける出来だとは思いますが、むしろそのメジャーさがあったからこそ21世紀のプログレシーンがあると言っても過言ではなさそうです。


Dream Theater: Studio Albums 1992-2011

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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