Dream Theater「Octavarium」: 「0〜8」は無限へと…新時代「令和」の幕開け!
by 関口竜太 · 2019-05-01
おはようございます、ギタリストの関口です。
というわけで本日2019年5月1日より
「令和」時代に突入しました!!
年明けにも近いお祝いムードで迎えた新時代ですが、まずは30年間務められた上皇陛下にお疲れ様でしたと感謝したいです!生前退位のおかげでこうして晴れやかな新時代を迎えられました。
昔は災害や飢饉があるとリフレッシュの意を込めて改元を行なっていたみたいですが、本当にそういう気分になれますね。歴史的瞬間に居合わせることができてとても幸せです。いい時代になるといいなぁ!
そんなわけで早速令和初のプログレ紹介をしたいと思うのですが、平成プログレベストの中でまだ紹介しておらず、かつ新元号「令和」にもぴったりなアルバムです。
Octavarium / Dream Theater
Dream Theaterは、アメリカのプログレッシブ・メタルバンド。「Octavarium」は8枚目となるスタジオアルバム。
参加メンバー
- James LaBrie – Vocal
- John Petrucci – Guitar
- Mike Portnoy – Drums
- John Myung – Bass
- Jordan Rudess – Keyboard
概要
ニューヨークの老舗レコーディングスタジオ、ザ・ヒット・ファクトリーで録音された最後のスタジオアルバム。
2001年発表の6thアルバム「Six Degrees Of Inner Turbulence」より続く、アルバムのリリース枚数と曲数を合致させるパターンに倣っています(6thアルバムは全6曲収録、7thアルバム「Train Of Thought」は全7曲収録)。本作「Octavarium」もタイトルからすでに「8」を強く意識したアルバムになっています。
5thアルバム「Metropolis Pt.2 Scenes From A Memory」より続く、前のアルバムの最後の音が次のアルバムの最初に繋がるというパターンにも倣っており、前作「Train Of Thought」のラストの音がそのまま1曲目の初めの音となっています。
壮大で美しすぎるコンセプトアルバム
概要で言った通り、過去のアルバムとの連携が取れていることも確かですが、それ以上に本作に用意されたコンセプトは聴く人を楽しませる仕掛けがてんこ盛りです。
コンセプトはずばり「黄金比」。
黄金比とは、歴史的芸術的観点から現れる「美しいとされる比率」で、近以値は1:1.618、約5:8。
この「5」と「8」こそ「Octavarium」最大のコンセプトであり全てのコンセプトアルバムの中でも最大級に練られた芸術性が話題になりました。
というわけで手元に用意、早速見ていきましょう。
ジャケットと盤面
ニュートンのゆりかごが印象的ですが、鉄球の数は「8」、その間を飛ぶ鳥の数は「5」。
また盤面では「八」角形の中に「五」芒星が描かれています。
帯の部分にはピアノの鍵盤、これも「5」と「8」の関係です。ジャケットの鳥は黒鍵の位置に飛んでいます。
ジャケット裏は鍵盤のモチーフ。黒鍵の位置にはそれぞれ曲を繋ぐためのSEが差し込まれています。
楽曲とアートワーク
収録曲は全8曲。その中で楽曲のキーは全て短調(マイナーキー)にて1音ずつ循環する造りになっています。
またアートワークではそれぞれ5:8をモチーフにしておりその和である13も黄金比で現れるフィボナッチ数列上の数となります。各ページにおける説明は画像上にて。
歌詞カードの扉には糸電話を持った少年。一連のアルバムがループしているコンセプトアルバムであることを示しています。なお少年の指の数は左が3本、右は5本、計8本。また数字の「8」は「∞(無限)」を暗示します。
楽曲
- The Root of All Evil
- The Answer Lies Within
- These Walls
- I Walk Beside You
- Panic Attack
- Never Enough
- Sacrificed Sons
- Octavarium
ここまで練りに練られたコンセプトを説明できたと思いますが、収録された楽曲たちも素晴らしいものばかりです。
キーボディストJordan Rudessが加入した1999年から、ドラマーMike Portnoyが脱退する2010年までの11年間はDream Theaterにとってまさに黄金期と呼べる安定のメンバー編成でした。そんな中、年々ヘヴィで複雑になっていく楽曲から一度原点に立ち返ったのも本作の特徴と言えます。
彼らにとっての原点とは1970年代に最盛を迎えたプログレッシブ・ロックであり、影響の強いGenesisやYesなど構築プログレを思わせる#2「The Answer Lies Within」や#4「I Walk Beside You」などライトな楽曲も収録。
反面、Metallicaに倣うヘヴィメタルからの影響も彼らのファクターであり王道のハードロック#1「The Root Of All Evil」や、バリトン・7弦ギターが生む極重サウンドの#3「These Walls」#5「Panic Attack」も聴くことができます。
#7「Sacrificed Sons」では前作「Train Of Thought」収録の「In The Name Of God」の続編とも言うべき、9.11アメリカ同時多発テロをテーマにしたシンフォニックなプログレッシブ・メタルをバラードという形で表現。こうしたメッセージ性の強いテーマの考案はMike Portnoyの仕事ですが歌詞はJames LaBrie。
そして全てを締めるタイトルトラック#8「Octavarium」。「8」をテーマにした24分にも及ぶ大作は「5」のパートからなる組曲で、Jordan Rudessが今作から導入したコンティニューム・フィンガーボード(鍵盤の上に布が張ってありシームレスに音階を移動できる、ヴァイオリンやフレットレスギターのような概念のキーボード)でのうねるイントロが新たなプログレの幕開けを予期させてくれます。
12弦ギターやフルート、ラップスティールなど先人からのプログレの流儀もしっかりと継承。第三章に当たる「Full Circle」 ではキーを#♭含めまるまる循環するとんでもない発想のインストパートまで用意されており、本作における抜け目のなさをここでも感じることでしょう。
なお、タイトルの「Octavarium」は造語になりますが同年2005年には同じくアメリカのプログレバンドSpock’s Beardが「Octane」をリリースしており捻りを加えたのがきっかけ。「oct」は「8」を表す接頭辞として有名ですが「varium」というのも「様々な」という意味をもつラテン語であり本作の曲のバリエーションに繋がっています。また接尾語としての「-arium」は「保持されている状態」を表すため「octaveで固められたもの」という意味もあります。
そしてそれらは以下の歌詞にすべてが集約されています。
Trapped inside this Octavarium
このオクタヴァリウムの中に囚われている「Octavarium」19:32〜
最後に
新時代「令和」が「08」で表現され、またその意味は「Beautiful Harmony」であることからこのアルバムとの親近感を得たおバカなファン心を読み取っていただけたら幸いです。そもそもアメリカの音楽に日本の元号制度を当てはめてる時点でハテナなのですが、それもこのお祝いムードに乗じて許していただきたいと思います。
何より「令和」が美しく反映するいい時代であることを心からお祈りいたします。
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タグ: コンセプトアルバムプログレッシブ・メタル米プログレDream TheaterMike Portnoy
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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