高嶋政宏著「変態紳士」。現代に息苦しさを感じた人が求める超マイノリティの世界。かっこつけてるとチャンスを失うぞ。
おはようございます、ギタリストの関口です。
今日は高嶋政宏著「変態紳士」についてお話したいと思います。
変態紳士 / 高嶋政宏
高嶋政宏さんは、東京都出身の俳優。
ご両親から続く芸能一家の長男で、弟は俳優の高嶋政伸さん。ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんは従妹に当たります。舞台、ドラマ、映画、バラエティなど幅広く活躍中です。
そんなメディアのメインストリームで活躍する印象とは反面、高嶋さんご本人の人間性や嗜好は端から見れば非常にマイノリティでアブノーマルなものでした。
本書は、全11章10項目に渡り高嶋さんの「変態紳士」たる嗜好と拘りを余すところなく語り抜いた本です。
先に結論から言うと、
マイノリティを晒すことで縛りのない自由な人生を送れ、かつ評価もされていく、そんなノウハウが詰まった現代を生き抜く姿勢の究極系です。
SM
本書のメインを飾るテーマ。現在の高嶋さんを語る上で欠かせない要素であるSMについて事細かに書かれています。何と言っても第一章が「遅すぎたSMとの出会い」ですから。
凝り固まったイメージと偏見
さすがに僕も全くの管轄外からの攻めに一瞬戸惑うのですが、SMに対する「世間」と「同志」との認識のズレ、理由があってそこに訪れる変態たちの社交場、そこで居合わせる人々が持つ、各々の嗜み方や拘りがこのテーマには詰まっています。
例えば僕たちがパッと思い浮かべるSMのイメージは男性用のアダルトビデオから刷り込まれたイメージであることが大半だそうで。実際はもっと規律高く連携の取れた業界だそうです。僕はその手のビデオは見ないのですが何故か見ていなくても共通認識でそう思われがちですよね。
でも変態たちは知っている、本物を見てるから。
普通の人たち
女王様と呼ばれる女性は普段はどこにでもいる普通の女性だとか、縄で縛られる男性ほど日常的にネクタイをきっちり締める人だったりする。世間からの目とか自分のイメージを保つために張った虚勢とかそういうものはそこではナンセンスということがよくわかります。
高嶋さんはそんな空間で、Sの女王様やMの男女を見ながらお酒を飲むのが最高の嗜みだということ。
ちなみに第一章、第二章とSMの話でもはや下ネタを超えた文字通り「変態」的な内容なのでその後さらっと下ネタが登場してもテキーラの後のビールくらいにしか感じません。
プログレッシブ・ロック
高嶋さんと言えばイギリスのプログレッシブ・ロックバンドKing Crimsonの大ファン。1974年の名盤「Red」に収録された楽曲から「スターレス高嶋」として音楽に関わっていることも有名です。
プログレとの出会い
近所に住む兄貴分的存在から「クリムゾンキングの宮殿」を借りたことでロック、それもプログレに目覚めました。クリムゾンを貸したその人物はパンクバンドをやっていたそうですが、プログレとは相反する音楽を演奏しながら「こういうのも聴いておけ」とクリムゾンを勧めた事情を察するに音楽的な守備範囲が広い方だったのでしょう!
内向的でイジメの対象
意外かも知れませんが少年期は肥満体型だった高嶋さん。中学の時に通販のトレーニング器具でダイエットに成功しますが高校はエスカレーターだったので周りは「デブが痩せた」というくらいの認識だったそうです。
プログレの影響でベースを始め高校時代にはそれなりに上達したため噂を聞きつけた先輩にバンドへ誘われたりして以降イジメや高嶋弄りというものはなくなったと語ります。まさに「芸は身を助ける」を象徴したエピソードです。
グルメで健康マニア
食に対する拘りから食べログにレビューをまとめています。また「偏食」と自己評価しつつも料理が得意で、差し入れや奥さんに作る料理は評判が高い他、自身でスパイスを持ち合わせロケ弁をカスタマイズするマニアックな一面も語られています。
役者柄健康に気を使うのは想像に硬くないですが、ネットや世間の口コミは信じず自らの実体験を信仰するタイプ。水素、お茶、整体、モリンガパウダーなど関係ない人からしたらただただ胡散臭いだけかもしれませんがご本人が証明となった健康の秘訣も垣間見ることができます。
霊感
これまた関係ない人には胡散臭くも聞こえるテーマですが、ご自身の体験したスピリチュアルなエピソードも語られています。とは言っても話にはよく聞く範疇ですので斜に構える必要もないです。
美輪明宏さんとのお付き合いもあってより一層磨きがかかっているとか。
愛妻家
自叙伝で惚気られるほど生粋の愛妻家。奥さんはドイツ系スイス人と日本人のハーフである女優・歌手のシルビア・グラブさん。
彼女に対する所謂「嫁コンプレックス」が本書では強すぎるほど出ています。SMの項目であれほど変態を晒しておきながら奥さんへ向かう一途なまでの想いは同じ妻帯者として尊敬できます。
個人的な話で恐縮なのですが、これに関しては結構共通項がありましたね。結婚して4年が経ちきちんと夫として接することができてるか見えにくくなることもあるのですが自分の足が地に着いてることを再認識させてくれました。
最後に
「自分って人と違うのかも」とか「あの人はこうなのにどうして自分は」って人と比べてしまうことって誰しもあると思います。ですが人と自分を比べることは例え隣にいたとしても鳥と魚を比べるようなもので、ただただ時間が不幸にすぎていきます。
そうではなくて人と違う自分、違うからこその自分をもっと愛してあげようと思わせてくれる本でした。
ジャンルに対して人口が少なくなればなるほど指針となる灯台は霞んで見えなくなりますが、そこでも前に倣え右へ倣えではなくて自分が灯台となれるくらい周囲を照らしてあげればそこにきっと人は集まってくる。
「安心してください、あなただけじゃないんです」
そう言うのはまさにそんな「変態紳士」である高嶋さんでした。