Queen「A Night at the Opera」: プログレ全盛期を少し振り返る、その2。真似ではなく生まれる精神こそプログレだというお話。
by 関口竜太 · 2019-04-15
おはようございます、ギタリストの関口です。
昨日、あーだこーだ言いながら無事動画の撮影できました!
まだチェックしてないので使えるか早々に確認しないといけないのですが1時間に渡る長丁場で、なんとか選挙カーとタイミングをずらすことに成功!もしかしたらちょっと奥の方で聞こえてるかもしれないけどそれは編集でなんとかなる範囲だと思います!
70年代中期のプログレ
プログレ最盛期を少し振り返る。現代メタルにも通用するGenesis、1972年の名盤をご紹介。
先日この記事でも振り返ったように、プログレの最盛期は70年代中期です。前回までは72年までしか振り返っていませんでしたが、いよいよここからプログレという大車輪が加速していきます。
1973年
同じ年73年にはPink Floydが「The Dark Side Of The Moon(狂気)」をリリース。これが全世界で5000万枚を売り上げる歴史的名盤になります。UK、USは元より日本のオリコンチャートでも2位を獲得したわけですから、Pink Floydの偉大さと同時に世の音楽の嗜好が複雑なものを欲していた時代と言えます。
名盤なのに意外と難しい。初心者向け Pink Floyd「狂気」の聴き方。
またEL&Pは同年「Brain Salad Surgery(恐怖の頭脳改革)」を発表。71年の転機となった名盤「Tarkas」の歌詞に登場する伝説の怪物「マンティコア」をその名に持つ「マンティコア・レーベル」を設立しそこの第一弾アルバムとなります。
1974年
74年にはKing Crimsonが「Red」をリリース。俳優高嶋政宏さんの青春を飾る一枚に。このアルバムに収録されている曲から取って、King Crimsonについて語る高嶋さんを「スターレス高嶋」と呼びます。
この頃プログレはもはや世界的音楽となっていて、彼らのフォロワーと呼ぶべきバンドは多数。一方で各五大プログレバンドはピークを迎えこれ以降アルバムセールスは徐々に落ち着いていきます(5000万枚が3000万枚に減るとかそういう次元の話です)。
そして彼らの影響を受けつつもこれから新ジャンルを造り上げていくバンドが出始めます。Queenなどはその一つ。この年にリリースされた「QueenⅡ」はコンセプトアルバムとしてプログレの影響が存分に伺えます。
1975年
EL&Pが活動休止、Yesはソロ活動へ。レジェンドでなければバンドの寿命自体短かったこの頃は段々とクラシカルなサウンドにも革新が必要になってきます。
そんな中でも、このブログでも紹介したフランスのTai Phongがデビューするなどプログレはイギリスを飛び出しまだまだ人気の音楽。
サムライプログレ第一弾。フランスTaï Phongの先見の明によるハードなプログレロック!
また、Queenは「A Night at the Opera(オペラ座の夜)」に収録された「Bohemian Rhapsody」でロックとオペラの融合を提示。バンドを押し上げると共にプログレの新たな一面を見せてくれました。
というわけで今日はこちらのアルバムです!
A Night at the Opera / Queen
A Night At The Opera (2011 Remaster)
Queenは、イギリス・ロンドン出身のロックバンド。世界的に成功したロックバンドの一つでアメリカの「ロックの殿堂」にも名前を連ねアルバムのトータルセールスは1億7000万枚以上。
ジャンル「クイーン」を象徴する独特の音楽性
今では一般的となったギターのオーバーダビングを多く取り入れ、またボーカルパートを多重にすることで生まれる「重厚なコーラス」が大きな特徴となりました。
ボーカルFreddie Mercuryがピアノを弾く他はシンセサイザーの類をほとんど使わず、そのオーケストレーションはギターの多重録音によって表現されています。初期のレコードには「No Synthesizer」というクレジットが入っているとか。
ギタリスト目線で言えばBrian Mayの自作ギター「Red Special」やイギリス硬貨をピックに使っている事実はあまりに有名。その拘りはブライトなサウンドにしっかり反映されています。
イギリス出身、全盛期に広げたその音楽性からプログレの影響も伺えますがインタビューによる影響を受けたアーティストはThe Beatles、Jimi Hendrix、Elvis Presleyなどで五大プログレバンドなどの名前は言及されていません。
誰もが愛する名曲「Bohemian Rhapsody」
とは言えプログレ全盛期に新たな音楽の可能性として提示された以上、それは理論上プログレッシブ・ロックと考えるべきでしょう。それは「QueenⅡ」のころからわかりきっていたことですが。
Queenは本作にてアルバムが初の全英一位を獲得します。
とりわけシングルカットされた「Bohemian Rhapsody」は全英シングルチャートで9週連続一位という新時代の到来を告げました。なおおよそ6分あるこの曲、製作段階では16分だったらしく正直そのバージョンも聴いてみたいと思うのは僕だけでしょうか。5つの構成からなる壮大な名曲は全世界の人々に愛されることになります。
これは一言にプログレとして片付けられない凄みを感じます。もはや他の誰にも真似できない次元です。
わずか5年ほどで最盛期を迎え複雑ながらデフォルトも確立されたプログレッシブ・ロック。ですがその後グランジ、パンク・ロックブームの到来で氷河期を迎える前に今一度再確認させられた事実があります。
プログレッシブ・ロックとは人が前進するための精神であり形式を真似することではないのです。
Queenのような偉大なアーティストが教えてくれるのは何も曲の素晴らしさだけではないということを痛感しました。
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タグ: 英プログレKing CrimsonPink FloydQueen
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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懐かしいです。
映画も大ヒットして嬉しいですね。
(=^ェ^=)