Genesis「Foxtrot」: プログレ最盛期を少し振り返る、その1。現代メタルにも通用する1972年の名盤!
おはようございます、ギタリストの関口です。
古いプログレの良さ
最近、古いプログレにかなりハマってきたご様子の関口さん。プログレの入口がDream Theaterだっただけに、比較的モダンなものしか初めは聴けませんでした。
一方で、最新のものももちろん良くて、スッキリしたプロダクションだったり日々進歩する演奏技術だったりとても近未来的なものを感じます。
この「進歩する演奏技術」とか「近未来的」を「現在」と仮定してタイムスリップ、過去から見つめた「未来」が古いプログレには詰まっています。
最盛期である1970年代
プログレにとって最盛期と呼べる時期は?と問えば、多くの人は1970年代中期と答えます。
The Beatlesがヒットチャートのトップに君臨していた60年代に生まれひっそりと、しかし着実に革命を起こそうとしていた後のプログレッシブ・ロックはそのThe Beatlesがまさに解散しかけている1969年に突如姿を現しました。
1969年
King Crimson – In The Court Of The Crimson King
Genesis – From Genesis to Revelation
Yes – Yes
King Crimsonのデビューは半世紀も前にして衝撃的でしたし後に「五大プログレバンド」と呼ばれるGenesis、Yesもこの時期にデビューします。なおPink Floydはそれより以前1967年のデビュー。当時はサイケデリック・ロック色の強いバンドでした。
1970年
1970年になるとPink Floydがプログレッシブな名盤「Atom Heart Mother(原子心母)」をリリース。またEmerson, Lake & Palmerがデビューします。The Beatlesはこの年に解散。解散した一ヶ月後にラストアルバム「Let It Be」をリリース。ただでは転ばない精神が如何にもビートルズらしいです。
1971年
この年にはEL&Pが「Tarkus」をリリース。Yesもダブル・プラチナを獲得する「Fragile(こわれもの)」をリリースするなど、時代は変拍子、長編、組曲、シンフォニック。まさに戦国時代の幕開けでした。またR&Bからプログレへ転向したThe Moody Bluesが「Every Good Boy Deserves Favour(童夢)」にて全英1位/全米2位を獲得。
1972年
Yesは「Close to the Edge(危機)」をリリース。全三曲ながら18分に及ぶ組曲を展開しました。この頃になると五大プログレバンドに続くプログレバンドが次々と登場します。
Gentle Giant – Octopus
Strawbs – Grave New World
今日はこの1972年から五大プログレバンドの一角Genesisのアルバムをご紹介します。
Foxtrot / Genesis
Genesisは、イギリス・イングランドのプログレッシブ・ロックバンド。五大プログレバンドの代表でありスタジアム・ロックバンドとしても成功を納めました。
当時のメンバー
- Peter Gabriel – Vocal
- Tony Banks – Keyboard
- Mike Rutherford – Bass
- Steve Hackett – Guitar
- Phil Collins – Drums
現在はここからボーカルのピーター・ガブリエルとギタリストのスティーヴ・ハケットが抜けた形になります。
プログレ最盛期に投下された現代に続く一枚
アルバムタイトルの「Foxtrot」とは4/4拍子から成る社交ダンスの一つで、「slow, slow, quick, quick」という緩急のリズムをつけることでシンコペーションに対応したスタイルとしてアメリカで流行しました。その「Fox」にかけてジャケットでは赤のドレスを着た狐が描かれています。
オープニングを飾る#1「Watcher of the Skies」は、現代のプログレでも聴かれる楽器陣のタイトなキメ。Dream TheaterがGenesisから影響を受けているというのが彼らの「Overture1928」 を聴くと納得です。

Watcher of the Skiesイントロのフレーズ
当時最新鋭であるメロトロンやハモンドオルガンも大活躍と言えるほど出ずっぱり。使わないと勿体無いというくらい惜しげも無く多用しているのですが、そういう背景が「メロトロン=プログレ」という世間的イメージを確立した言えそうです。
イントロのピアノから印象的な#2「Time Table」は、ダークなKing Crimson、怪物めいたEL&P、サイケデリックなPink Floydとは異なるGenesisならではの英国紳士的な気品ある一曲。皆が誰よりも新しいことをやろうと走っていた時代にしっかり歌として聴かせる度量がもはや別格です。
大作を前にした小曲インスト#5「Horizons」は、アコースティックギター一本で聴かせるソロギター曲として専門でやっているアーティストに引けを取らない十分な名曲。アルペジオにメロディを奏でるだけでなく、しっかりハーモニクスで鼓膜も心地よく刺激してきます。
23分の大作「Supper’s Ready」
そしてラスト#6の「Supper’s Ready」は、23分に及ぶ組曲。Genesisらしいシアトリカルな大作はピーター・ガブリエルによる語りのようなボーカルから幕を開けます。ファンタジックなメロラインにクラシカルなペダルノートなども挟み緩急溢れる演出とハードロックへ通じていくビートのアプローチが印象的。
8分を超える頃にはこれも最先端、クラシカル的速弾きフレーズをギターとキーボードでユニゾンするという、今や構築プログレの常套手段となったこれも1972年にはすでにありました。
常に一定の緊張感を保ちながら40年以上の古さをもろともさせず終盤、徐々にクライマックスへ向かいながらここでもピーターの力強いボーカルが聴けます。何度も思いますが本当に72年作これ?
ラストは壮大なコーラスにシーケンスっぽいオルガン、ギターソロなどのアンサンブルのままフェードアウト。ラスト1秒まで残さず聴ける、それが「Supper’s Ready」です。
反面この大作だけ聴いても印象は薄いので是非アルバムの頭から腰を据えて聴いていただければと思います!
プログレ初期のものへの取っ付きにくさ、何となく分かります。
自分もプログレに入ったきっかけがPorcupine TreeのIn AbsentiaやDream TheaterのTrain Of Thoughtといったメタル寄りの作品だったため、プログレ然としたKing Crimson等の大御所の音楽に浸れるまで暫く掛かりました。
自分の場合はこれら大御所への取っ掛かりを作ってくれたのがDTのJordan Rudessでした。
2007年ソロ作のThe Road Home。本作はGenesis等の往年のプログレの名曲をルーデスがカバーしたアルバムなのですが、カバーというよりは独自の解釈によるリアレンジが過ぎて、もはやルーデス本人の楽曲と言ってもいいくらいです笑
参加アーティストも豪華ですし、比較的メタル寄りにアレンジされていて非常に聴きやすい作品です。
自分はこれにどハマりして、ここから原曲へと流れていくことができました。
ご存知かもしれませんが、もし未聴でしたら是非!
しかし未だにプログレ特集を歌った本では御三家ばかりフィーチャーして、近年の人気アーティストはほんの少し触れるだけなのはどうしてなんでしょうね…
最近ではプログレ=テクニカルのイメージが付いているのでPorcupine TreeやDream Theaterの入りやすさが返って往年のプログレロックの敷居を高くしているのかもしれませんね。
The Road HomeはTarkusに惹かれたのがきっかけでチェックしました!大分ルーデスアレンジが施されてますよね。現在一線で活躍しているミュージシャンが古い曲をカバーすることで若い世代が掘り下げるきっかけを与えてくれるのはいいことです。
海外では今だプログレっていうジャンルは人気でいいバンドがいっぱい生まれてる一方、日本ではほぼ輸入ですからね。世間が興味ない「全盛期の外」を特集しにくい現実はあると思います。
やはりクリムゾンとフロイドを別格扱いに感じます。多くのアーチストが亡くなる中、ロバート・フィリップがまだまだ元気なのには驚きです。
(=^ェ^=)