Pink FloydのDavid Gilmourが自身のギターコレクションを出品。これから彼が壊すべき”Wall”とは。

おはようございます、ギタリストの関口です。

Pink FloydのギタリストDavid Gilmourが自身が所有する120本のギターをオークションに出品、その売り上げは世界中の飢餓撲滅やホームレス対策など、慈善事業に当てられるそうです。

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出品されるのは、彼のトレードマークでもあるブラックのストラト、シリアルナンバー#0001の54年製ストラト、55年製レスポール、58年製グレッチのホワイトペンギン、さらにはマーチンD-35、ギブソンJ-2000など。

高いものでは10万ドル〜15万ドルくらいと想定されていて日本円でおよそ1100万円〜。中でもブラックストラトは「狂気」「炎」「アニマルズ」「ザ・ウォール」など錚々たる名盤の数々で弾かれたコレクション的価値も非常に高い一本。

現在、世界でも屈指のオークションハウス「クリスティーズ」のHPやYouTubeで詳細動画を閲覧することができます。

とても注目を浴びていて、プログレやPink Floydのファン以外にとっても誇らしいニュースではありました。が、裏を返せばギルモアの引退、そして日本でいう終活が始まっているとも言え、寂しい気持ちもありますね。



The Wall / Pink Floyd

「The Wallは、イギリスのプログレッシヴ・ロックバンドPink Floydの13枚目のスタジオアルバム。全英三位/全米一位、全世界でのセールスは3000万枚という驚異のモンスターアルバムです。なおバンドの中のセールスでは「狂気」の5000万枚に次ぐ第二位。世界一売れた二枚組アルバム。

なお1982年にはイギリスでこのアルバムを元にした映画化もされています。

ロックオペラの名盤


二枚組のコンセプトアルバムであり、ロックオペラとしても有名な一枚です。ロックオペラは今でいうストーリー形式のアルバム形態で、単発の曲が並んでいながらそれらが繋がりストーリーを形成するアルバムです。単純にコンセプトアルバムと重複する部分もありますがストーリーという点で同バンドの「狂気」とは明確に区別されます。

アルバム概要


ロックスターの主人公ピンクの人生(生まれてから死ぬまで)がストーリー形式に進行していきます。その際彼に立ちはだかる様々な苦悩や困難、教育や社会の圧力などを「壁」に例えています。ここでのピンクは後にドラッグにも依存していきますがそれはかつてのメンバーSyd Barrettの影を思わせます。

アルバムのほぼ全曲を書き下ろしたRoger Watersの哲学的観点から来る歌詞や、曲間で鳴り響くヘリなどのSEもPink Floydの十八番として健在。また主人公の「父親を早くに亡くしている」という設定も、ロジャー本人の実話から採用していると思われます。

最後に


Pink Floydはいつの時代も伝説のロックバンドとして廃れることなく圧倒的な支持を受けてきました。それはプログレッシヴ・ロックという一つのジャンルが衰退を迎えてもなお人気があったというほど不動のものでした。

その人気に裏付けられているのは常に「人の内面を描く」というコンセプトであり、人が普段誰にも見せない隠れた本質をPink Floydの手によって暴かれてしまうからだと思います。

例え英詞の意味が聞き取れなくても関係ない、サウンドに施されたあらゆる工夫と演出によって言語や文化の壁を超え今日に至っているのです。

まさに体で聴くという音楽の常識の壁さえも超えてくるPink Floyd。ギルモアが自身の生涯をもって今、新たな壁を壊そうとしています。

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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