Pink Floyd「The Dark Side Of The Moon」: 名盤なのに意外と難しい。初心者向け「狂気」の聴き方。
by 関口竜太 · 2019-01-08
おはようございます、ギタリストの関口です。
先日ようやく動画のデモ演奏を撮れたのであとは編集といった段階です。その編集がまた時間かかるんですが…動画って作曲ほど時間はかかりませんがこれからの時代曲より後世に残るんじゃないかなと思います。誰でも作れるという点で作品としてすごく身近ですけどその分作り手の性格が強く反映されてる気がしますね。
さて先日Mr.Childrenの「深海」の紹介をしましたがそれに絡めて今日は歴史的名盤のご紹介です。
The Dark Side Of The Moon / Pink Floyd
Pink Floydはイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。1970年代に最盛を迎えたプログレッシブ・ロックを代表する五大プログレバンドの一角として世界的に有名なバンドの一つです。
世界を代表するコンセプト・アルバム
本作「The Dark Side of the Moon」は、1973年に発表されたPink Floydの8thアルバム。邦題は「狂気」。hypnosisがデザインしたジャケットはあまりにも有名。
プログレにおけるトータルコンセプトアルバムの元祖はThe Beatlesが1967年に発表した「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」と言われポピュラーミュージックが持つ新たな可能性を提示した瞬間でした。そしてそのコンセプトアルバム旅は本作「The Dark Side of the Moon」にて一度完結すると言われるほど歴史的な名盤です。
そのThe Beatlesのラストアルバムからわずか4年あまりで音楽がここまで進化したことへの衝撃は想像に難くありません。
人間の内面に潜む「狂気」を書き出していくというコンセプトの本作は発表されるや全世界で大ヒットを記録し、2006年に発表された「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・ベストアルバム500」では第43位にランクインしています。とりわけ「Money」のアメリカでのヒットが大きいようです。
今や好きな人がひっそりと聴くためにあるマニアなジャンルであるプログレッシブ・ロックにおいて全世界で5000万枚を売り上げたというのは時代とアルバムの完成度がこれ以上ないくらいマッチした結果だと思います。
メンバー
- Roger Waters – Bass, Vocal
- Richard Wright – Keyboard, Vocal
- Nick Mason – Drums, Percussion
- David Gilmour – Guitar, Vocal
収録曲
- Speak to Me
- Breathe
- On the Run
- Time 〜 Breathe (Reprise)
- The Great Gig in the Sky
- Money
- Us and Them
- Any Color You Like
- Brain Damage
- Eclipse
名盤の割に難解?
ですがあえて個人的な見解を言わせてもらえばこのアルバムはその評価と対照的に、音楽としては中〜上級者くらいの難易度の作品なのではないかということです。
音楽を聴くのに難易度という言い方はいかがなものかと思いますが、少なくともポップだったりロックなパーティソングを求めるならその逆を行くのがこのアルバムです。事実僕も数年前までどこを捉えて聴いたらいいのかよくわかりませんでした。
そんなとき僕が気づいた、このアルバムは「深海」なんだということ。
深海はMr.Childrenの5thアルバム。別の記事で紹介してるので詳しくは「Mr.Children「深海」: ミスチル随一のプログレに込められた想いと「脱出」。」を読んで欲しいのですがこのアルバムが「狂気」を意識したことは明白でこのアルバムを掘り進めて行くことで「狂気の良さ」がわかってきます。
「深海」と「狂気」の比較
共通項目を見ていきましょう。
- 人間の内面の闇ぶかさを描いたコンセプトアルバムである
- アルバムを通して曲間が繋がり1曲としている
- テープやサンプラーを使ったパルスのSE(DiveとSpeak To Me)
- 爆撃音、ヘリ、戦争がテーマの曲など連想させるサウンドが似ている(マシンガンをぶっ放せとOn The Run)
- スキャットやゴスペルなどジャズや黒人ルーツのコーラスが取り入れられている(虜とThe Great Gig In The Sky、Brain Damage)
- 曲の途中から倍速になり盛り上げる演出がされている(シーラカンスとMoney)
- 非常にエモーショナルなサックスソロ(ゆりかごのある丘からとUs And Them)
加えてRojer Watersによる哲学的な歌詞は、「深海」において桜井和寿さんが言う「シーラカンス」のそれと受け取ることもできそうです。お互いのラスト「深海」と「Eclipse」では言葉を羅列し繰り返すという面において歌詞でも共通するものが見受けられます。なお「ゆりかごのある丘から」はPink Floydの「Shine On You Crazy Diamond」からインスピレーションを受けている節を感じます。
最後に
この辺を踏まえて改めて聴き比べて見ると、Mr.ChildrenがPink Floydのオイシイ部分を見事にオマージュしていることに気づきます。「深海」は「狂気」の入門編と言ってもいいかもしれません。洋楽なんて知らない、プログレッシヴ・ロックなんてもっと知らない、桜井さんカッコイイー!っていう人にこそ勇気を出して飛び込んで欲しいアルバムです。
21世紀のプログレッシヴ・ロック100―STRANGE DAYS SELECTION (100 MASTERPIECE ALBUMS)
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タグ: 英プログレMr.ChildrenPink Floyd日プログレ
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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