Mr.Children「深海」: ミスチル随一のプログレに込められた想いと「脱出」。
おはようございます、ギタリストの関口です。
2018年最後となりますがプログレ紹介で締めたいと思います。
深海 / Mr.Children
ラストにミスチル!?と思われるかもしれませんが侮るなかれ、実はプログレアルバムの中でもイチオシにハマりました。
深海は、1996年にリリースされたMr.Childrenの5thアルバム。シングルに「名もなき詩」、「花 -Mémento-Mori-」などの名曲を含んだミスチルの中でも全盛期と呼べる時期のアルバムです。
ミスチルによるプログレ的コンセプトアルバム
このアルバムを聴いて印象に残るのはイギリスのプログレッシヴ・ロックバンドPink Floydからの影響を強く感じられるところです。曲間がシームレスに繋がる構成になっているのも全体的に暗い雰囲気の楽曲が並ぶのも、SEをふんだんに取り込んでいるのも「Dark Side Of The Moon」を彷彿とさせます。また9分近いバラード「ゆりかごのある丘から」は実に「Shine On You Crazy Diamond」です。
その辺のプログレのエッセンスを、日本を代表するロックバンドから感じ取れることが非常に嬉しいです。
セールスは順調。しかし…
アルバムのセールスは初動で153万枚を記録しトータルでも274.5万枚に達しました。しかし、当時はギターボーカルである桜井和寿さんの不倫騒動などがあり本人たちにとっては決して明るい音楽活動ではなかったと言えます。
シーラカンスに込められた意味とは
冒頭はストリングスインスト「Dive」から繋がる形で「シーラカンス」という12弦ギターを使った曲で幕を明けます。シーラカンスといえばおよそ4億年前に地球に誕生し、6500万年前に種が大量絶滅するも、今も現生種が存在する古代魚です。
桜井さんはこのシーラカンスを「純粋に音楽に向き合っていたころの躍動」のようなものの比喩として喩えています。そう考えて改めて歌詞を見ると実に考えさせられる1曲です。
「僕の心の中に君が確かに住んでいた気さえもする」
「ときたま僕は 僕の愛する人の中に君を探したりしてる」
ヒットの影で女性問題などに晒され揺れていたバンドの悲痛な叫びが静かに語られています。「ゆりかごのある丘から」ではラストに「シーラカンス」と歌われている他、ラストの曲「深海」ではこのようにも歌われています。
「シーラカンス これから君はどこへ向かうんだい」
「連れてってくれないか 連れ出してくれないか 僕を 僕も」
一貫して当時の心境を深海に喩え、また音楽という煌びやかな存在を遠くへ行ってしまったシーラカンスに喩えることでこのアルバムを52分の1曲として捉えられる作りに仕上げています。
ライブでの再現と深海からの脱出
なお、本作発売後にライブツアー「regress or progress ’96-’97」においてこの深海はほぼアレンジを加えないフルという形で演奏されています。そこには「OUT OF DEEP SEA (深海からの脱出)」というテーマが設けられておりこのアルバムの完結を意図していると思われますが、実際にこの深海から脱出できたのは復帰後の2002年作「IT’S A WONDERFUL WORLD」だと僕は考えています。
regress or progress ’96-’97 tour final in TOKYO DOME [DVD]
2件のフィードバック
[…] 深海はMr.Childrenの5thアルバム。別の記事で紹介してるので詳しくは「Mr.Children随一のプログレ作品「深海」に込められた想いと「脱出」。」を読んで欲しいのですがこのアルバムが「狂気」を意識したことは明白でこのアルバムを掘り進めて行くことで「狂気の良さ」がわかってきます。 […]
[…] Mr.Children「深海」: ミスチル随一のプログレに込められた想いと「脱出」。 […]