Dream Theater 「Black Clouds & Silver Linings」: 10年前の彼らを知っていますか?傑作の裏で揺れたバンドの名盤を聴け!
by 関口竜太 · 2018-11-07
おはようございます、ギタリストの関口です。
今朝、Dream Theaterニューアルバムの話をしましたが長くなりそうだったので書こうと思っていた解説こちらへ分割。
ご紹介するのは来年リリースになる「Distance Over Time」から見るとちょうど10年前に当たるこちらのアルバムです。
Black Clouds & Silver Linings / Dream Theater
Dream Theaterは、アメリカのプログレッシブメタルバンド。
全盛期メンバーによるクラシカル・メタルアルバム
ロードランナーレコードに移籍してから2枚目となる2009年発表の本作は、ファンの中でも評価の高いヘヴィメタルな一枚に仕上がっています。ジャケットデザインはRushなどプログレではお馴染みHugh Syme。
アルバム参加メンバー
- James LaBrie – Vocal
- Mike Portnoy – Drums, Vocal
- John Petrucci – Guitar
- John Myung – Bass
- Jordan Rudess – Keyboard
楽曲紹介
- A Nightmare To Remember
- A Right of Passage
- Wither
- The Shuttered Fortress
- The Best of Times
- The Count of Tuscany
アルバムの内容は全6曲。前作「Systematic Chaos」では世間が思うDream Theaterに若干のマンネリが見え出していたと思います。さらにこのアルバムを発表するまでの過程に、Dream Theaterの名付け親でもあるMike Portnoyの父親Howard Portnoy氏が他界するなどバンドとしても辛い時期があったことは確かでアルバムのタイトルはそういう背景から取られていると考えられます(アルバムタイトルは「苦あれば楽あり」といった意味)。
#1「A Nightmare To Remember」はブラックメタルな雰囲気を醸した16分を超えるナンバー。少年時代のペトルーシ一家に突如車が突っ込むという悲劇と悪夢の出来事を歌った曲。
イントロのダークなリフはPanteraのWalkを彷彿とさせこれはJohn Petrucciのバックグラウンドと推論できるところでしょう。中盤で魅せる6/8の叙情溢れるメロディラインはOpethの影響か、途中賛否両論あるマイクのラップ(!)もバンドの挑戦が伺えると言えそうです。
アルバムのリードトラックとも言えるアグレッシブなメタルナンバー#2「A Right Of Passage」。メロディを引き寄せるコードワークは多くのファンを納得へ導いたはずです。テンポチェンジしてからのギターとキーボードのソロは痛快の一言で、元のリズムへ帰還する際若干の不自然さは感じられますが十分に名演。
#3「Wither」は先行シングルカットされたバラード曲。系統としてはForsaken、Another Day、Lifting Shadow Off A Dreamあたりが近いです。マイク脱退後はThis Is The Life、The Bigger Pictureも類似曲。王道に聴こえますが意外に似た曲を探すと難しいです。
6thアルバム「Six Degrees Of Inner Turbulence」より毎回1曲ずつ収録を続けていた組曲「アルコール依存症を克服する12のステップ」も本曲#4「The Shuttered Fortress」にて完結しています。初めて聴いたときはプログレというよりメドレーみたいな印象を受けましたが今ではDream Theaterの中でも大好きな曲の一つです。
#5「The Best Of Times」は先に述べたHoward Portnoy氏を偲んだ2部構成の楽曲。前半は7拍子のポップロック、マイクのこれまでの人生を振り返ります。後半は父に向けた感謝のバラード。語るようなボーカルとワールド基準の良メロ、アルバム屈指の泣きのギターソロなどプログレという小賢しさを廃止した心に響く1曲です。
余談ですがGLAYの「SAY YOUR DREAM」はこの曲と構成や歌詞の世界観など共通点が見てとれます。もちろん何か関係があるわけではないです。
ラストは往年のプログレッシブ・ロックバンドへの敬意を深く感じられる19分の長尺曲#6「The Count Of Tuscany」。Yes、Pink Floyd、Rush…思わずにやけてしまうほど多彩なアプローチが聴きどころです。
トスカーナの街で出会った偏屈な男が死と向かい合い時に目を逸らしそれでも向かい合い、ビンテージワインを傾ける…ペトルーシらしい哲学的で考えさせられる詞です。文学的に読ませてくれる詞もDream Theaterが他のメタルバンドと違うところでもあります。
以上6曲。ヘヴィ、叙情、バラード、敬意、それぞれの思惑…最強の布陣と言われた99年から10年続いたメンバー構成のラストアルバムは大傑作になりました。あれから10年、Dream Theaterはどんな結論を見せてくれるのでしょうか、非常に楽しみです!
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タグ: プログレッシブ・メタル米プログレDream TheaterJames LaBrieJohn MyungJohn PetrucciJordan RudessMike Portnoy
関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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