TFK系列の新バンド
近年、プログレッシブ・ロック/メタルにおけるファミリー・ツリーはより広く枝分かれをし、すでに枝分かれした先の葉は色濃く鮮やかな緑を帯びてもはや大樹となりそうな雰囲気です。
特に多いのが北欧のギターボーカリストRoine Stolt 率いるプログレッシブ・ロックバンドThe Flower Kings(以下:TFK) と、それを取り巻く一派。メンバーを入れ替えては新規保存していったようなプロジェクトの多さで欧米のプログレシーンは常に潤っています。
メンバーはロイネを中心に同じくTFKのベーシストであるJonas Reingold 、Pain of Salvation のギタリストDaniel Glidenlow 、プログレ・フュージョンギタリストとして勢いを見せるPliniやSteven WilsonなどのサポートドラマーMarco Minnemann 、YesやKansasと言ったレジェンド級バンドのキーボーディストTom Brislin が主要なメンバー。
本バンドのテーマはプログレッシブでありながら、ポップスや映画音楽も混ぜたアートロック に仕上げることが挙げられており、ゲストにはDream Theaterの魔術師Jordan Rudess 、レジェンドJohn Anderson 、さらにファミリー・ツリーでは親戚関係にあるFlying ColorsのCasey McPherson などこれ以上ない力の入れようです。
楽曲紹介
Ahes of Down
They Know My Name
The Void
An Eye for an Eye for an Eye
Goodbye
Sea Without
Broken Cord
The Hiding of Truth
The Roaring Silence (Bonus Track)
Where Are You Going? (Bonus Track)
Time (Bonus Track)
Denise (Bonus Track)
曲のサイズは比較的コンパクトで、最大で14分ほどの長尺曲が一つと行った具合。しかしデラックス・エディションによるボーナストラック5曲を含むと実に12曲77分に及ぶ超ボリューム です。
ロイネの着想の下、多ジャンルを巻き込んだ本作は非常に形容しがたい一枚 と言えそうです。
基本はTFKを重厚にカスタマイズしたような音楽性 で、プログレッシブ・ロックとメタルの中間にあるよう。重たいドラミングやダークなシンセベースがダウナーな雰囲気に拍車を掛けます。
#1「Ahes of Down」 ではそんなTFKとPoSを併せたようなダークプログレ を展開、サックスソロにはマルチ奏者であるRob Townsendが参加している他、ワウを効かせたギターソロも痛快です!
続く#2「They Know My Name」 は伸びやかでメロディックなサビを有したバラード でSAW系シンセソロとダニエルのボーカルが冬の空っ風のように響く一曲。
VIDEO
個人的にはこのダニエルのボーカルも特筆すべき点。メインボーカルとして肩を並べるロイネとは湿っぽさの点で対照に当たり、#2や#5「Goodbye」 などのバラードにおいて切なく叙情的な歌を聴かせてくれます。
全体にダークな印象の強い本プロジェクトですが#4「An Eye for an Eye for an Eye」 ではリズミカルなロックンロール も聴けたりなどバリエーションも豊富。中盤以降のジャジーなピアノソロとのギャップが身悶えるほどかっこいいです。
14分の大作曲#7「Broken Cord」 にはJohn Andersonが、その後のバラード#8「The Hiding of Truth」ではJordan Rudessがゲスト参加。
複雑性と美しさを兼ね備えた、豪華絢爛かつ優雅なプログレロック作品に仕上がっています。
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