Transatlantic「SMPT:e」: 夏の夜風になびく大作!米英欧スーパーグループの記念すべき1stアルバム。
by 関口竜太 · 2018-08-09
こんばんは、ギタリストの関口です。
台風13号は進路を逸らして今日は一日過ごしやすい穏やかな一日になりました!午後からは夏らしい暑さが戻ってきましたがやっぱり晴れるというのは気持ちいいですね。明日からコミケですし悪天候は大変ですからね。。
今日みたいな日にBGMで聴いているアルバムをご紹介します。
SMPT:e / Transatlantic
Transatlantic(トランスアトランティック)は、米英欧プログレッシブ・ロックのスーパーグループ。こちらは1999年にリリースされた記念すべき1stアルバムで、以後不定期ではありますが2014年に4thアルバムをリリースするに至るまで活動が続いています。
超大作をテーマにしたスーパーグループ
かつてこれほどまでのメンバーが集結したグループも珍しいです。
アメリカからは日本でも大人気のプログレッシブ・メタルバンド、Dream Theaterの元ドラマーMike Portnoy、USプログレ・シンフォニックの巨匠・元Spock’s BeardのNeal Morse。イギリスからはネオプログレッシブ・ロックバンドMarillionのベーシストPete Trewavas。そしてヨーロッパを代表してスウェーデンのThe Flower KingsよりギタリストRoine Stolt。
スーパーグループの元祖Emerson, Lake & Palmerや80年代UKスーパーグループのAsiaなどプログレッシブ・ロックにはその筋の大物たちによるプロジェクトが幾度となく組まれてきました。
しかし2000年以降のシン・プログレ時代、温故知新なるプログレッシブ・ロックの再現をこの4人で行うことは非常に意味のあることでした。
Transatlanticの一番の特徴はジャムセッション的なバンドケミストリーを通じて超大作の王道プログレッシブ・ロックを展開する事。故に4thアルバムまでで発表された曲は全15曲、その総収録時間は5時間という割り算してもハテナが浮かぶ数字です。
そんな海を渡るような超巨大船のデビュー作を見ていきましょう。
メンバー
- Roine Stolt – Guitar, Vocal
- Neal Morse – Keyboard, Guitar, Vocal
- Mike Portnoy – Drums, Vocal
- Pete Trewavas – Bass, Vocal
楽曲紹介
- All of the Above
- We All Need Some Light
- Mystery Train
- My New World
- In Held (‘Twas) In I
本作のタイトルはメンバーのイニシャルから取られています。
これだけのトップミュージシャンが集まってもドイツのチャートで66位が唯一の記録という涙ぐましい結果はプログレならでは笑 それでも作品としてのクオリティは申し分なく、他のプログレバンドとは明らかに一線を画すワールド基準の音楽です。
#1「All of the Above」・・・しょっぱなからいきなり31分にも及ぶ大作のおでましです。ディミニッシュ感の強いプログレらしいリフ、ニール特有の歌えるシンフォニックなテーマにポップなサビが乗っかるのは安定のスタイルです。同じリフを繰り返してもマイク・ポートノイの手数がだんだんと多くなってくるので曲の緩急を何度も感じることができるまさにTransatlanticを印象付ける一曲です。
#2「We All Need Some Light」・・・12弦アコースティックの響くエモーショナルなバラード曲。メンバー全員が歌えるという特徴を活かした分厚いコーラスも聴きどころ。
#3「Mystery Train」・・・7,8拍目から始めることで変則的に聴かせるリフが印象強いポップロック。わかりやすいブレイクなどもありとても聴きやすいのですが7分弱でもコンパクトに思えてしまうトランスマジック。
#4「My New World」・・・個人的にアルバム内で一番好きな16分の大作バラード。ロイネ・ストルトの担当する5/8+6/8拍子パートのAメロから4/4に軌道修正したサビがまさに王道といった感じ。インストパートではテーマを繰り返すことで印象を付けてテンポを変化させていく、そんな芸当もお見事。
In Held (‘Twas) In I・・・とても変わったタイトルですが直訳すると「私の抱える内面的なこと」みたいな意味でしょうか。1960年代から70年代に掛けてイギリスで活動、その後一度解散したプログレッシブ・ロックの元祖Procol Harum(プロコル・ハルム)のカバー。原曲では5つの小曲で組まれた組曲となっていますがカバー版ではパートを一つ飛ばしながら1曲の中にまとめられています。どこかKing Crimsonっぽいアプローチも見受けられる本曲は一聴して天才的作曲センスに衝撃を受けること間違いなしです。
ちなみにプロコル・ハルムは再結成し6人くらいのメンバーのうちメインメンバー2人はそのまま残りを取っ替え引っ替えで24期ほどまでメンバーチェンジを繰り返し今日まで活動しています。
Transatlanticは2002年にニール・モーズがソロへの転向で一時活動を休止しその後2012年に復活しますが1,2を前期3,4を後期と分けた時、前期であるこの頃はかなりジャム要素が強いです。おそらくそういうコンセプトの下結成されたのだと思いますが、復活以降はもう少しキメも増えバンドとしての一体感を強調する方向へと変わっていきます。
しかしどんなに長くても疲れず聴いていられるというのは彼らが人間的な本質に触れてくれるからかもしれません。
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関口竜太
東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。
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