Periphery「Periphery Ⅱ」: 新プログレメタル“Djent”。インフルエンサーと大衆が変えた言葉。

おはようございます、ギタリストの関口です。

朝ランニングも毎日1kmですが依然続いています。今日で通算30日目だったのですが、たった1.1kmでも塵も積もれば山となります。おかげさまで少し減量し、セットメニューの腹筋のおかげでお腹周りも一回りだけ小さくなりました。

この週末は全国的に35度を超える猛暑日ということで今日は熱くなれるプログレとしてDjent(ジェント)をご紹介。

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Djent(ジェント)とは?


元はスウェーデンのメタルバンドMeshuggah(メシュガー/メシューガ)のギタリストFredrik Thordendal(フレドリック・トーデンダル)が、7弦ギターや8弦ギターなどのヘヴィな音をブリッジミュートして刻む際の擬音を表現した言葉として名付けられたのが始まり。

それをアメリカのプログレッシブ・メタルバンドPeriphery(ペリフェリー)のギタリストMisha Mansoor(ミーシャ・マンソー)が、インターネット上での音源や動画投稿フォーラムにて発信していたものが現在のジェントとして定着したんだそう。

◆ジャンルの特徴

7弦や8弦のヘヴィなサウンドを刻むリフが特徴。その際変拍子であったりポリリズムであったりと複雑なリズムを伴うことが多いです。リフの上にメロディが乗ることは少なく、その辺が従来のプログレッシブ・メタルとは決定的に違う点だと思います。そしてプログレから派生したとは言いつつも曲はコンパクトです。

◆音の特徴

僕もギタリストですから、ただ歪んでるだけじゃない独特のギターサウンドを調べ自分でも作ってみたりしましたが、実は歪みは少なめ。ハイゲインアンプの歪みを抑えながら徹底的にローをカット、TS系のオーバードライブも使ってミドルをブーストしていき、刻みのアクセントをより強調させるためノイズゲートにより音の余韻まで削っていきます

◆批判

実はジェントというジャンル自体に苦言が呈されているそうです。当事者であるはずのミーシャですら、元々はジェントを“その音を表現するための擬音語”として使っていたにも関わらず、現在は音楽のジャンルにまで意味合いが変わってきていることに疑問を感じているようです。

果たしてジェントは流行の波で呼ばれた一過性のものなのでしょうか?

言葉は変化する


一昨年、出版社が辞書を作る物語といて「舟を編む」というアニメが放映されました。そこで本来の意味とは違う形で現在に息づいている言葉がたくさんあるのだと僕も改めて知らされました。

例えば写メ。日本のVodafone(現在のソフトバンク)がカメラ付きの携帯電話を発表、それをメールに添付して画像を送る「写メール」が略されたこの言葉。時代が巡り携帯電話(もしくはスマホ)で写真を撮る行為そのものが写メとして現在も使われています。

「全然大丈夫」や「ヤバい」なども時代と共に意味が変わって広まった言葉です。小耳に挟みましたが、今は「汚名は挽回してもいい」そうです。名誉は返上しちゃいけない気がしますがどうなんですかね。

言葉は大衆が作る


脱線しましたがジェントもこれと同じなんですよね。言葉というのは個人が狙って作るものじゃない。むしろ、狙ったにも関わらず軌道が大きくずれそのまま定着することだってあります。

1960年代後半に現れた前衛的な音楽をその後プログレッシブ・ロックと呼んで早半世紀です。

いろんなジャンルとクロスオーバーを繰り返しながら今日まで進化してきたこのジャンルは80年代後半にはプログレッシブ・メタルへと派生しました。そこからすでに30年ですよ。新たなプログレメタルの形としてジェントが定着したのを僕はもっと受け入れるべきだと考えます。

確かに初めは個人で使ってた言葉かもしれませんが、それがジャンルになるなんて誇らしいじゃないですか。ミーシャはプログレメタル界のインフルエンサーです。

Periphery Ⅱ / Periphery


Periphery II

Periphery(ペリフェリー)はアメリカの6人組プログレッシブ・メタル/ジェントバンド。

略歴


2005年、ギタリストMisha Mansoorのプロジェクトとしてスタートしたのが始まり。元々、MeshuggahやDream Theaterのフォーラム、7弦ギター奏者の集まるフォーラムなどで音源を公開。主にインターネット上で人気を博していきます

2008年よりサポートミュージシャンとしての活動を開始。同時に自身の音楽性がMeshuggah直系のエクストリームメタルから、よりメロディアスなものへと変化をしていきます。2010年のデビューに際しボーカルをSpencer Sotelo(スペンサー・ソーテロ)へ変更、さらにトリプルギターという独自の編成にたどり着きます。

アルバム参加メンバー


  • Spencer Sotelo – Vocal
  • Misha “Bulb” Mansoor – Guitar, Synthesizer
  • Jake Bowen – Guitar, Synthesizer, Programming
  • Mark Holcomb – Guitar
  • Adam “Nolly” Getgood – Bass, Guitar
  • Matt Halpern – Drums, Percussion

ゲストミュージシャン

  • Guthrie Govan – Guitar Solo on #2
  • John Petrucci – Guitar Solo on #10
  • Wes Hauch – Guitar Solo on #13
  • Alice McIlrath – Violin
  • Lezlie Smith – Cello

楽曲紹介


  1. Muramasa
  2. Have A Blast
  3. Facepalm Mute
  4. Ji
  5. Scalet
  6. Luck As A Contrast
  7. Ragnarok
  8. The Gods Must Be Crazy!
  9. Make Total Destroy
  10. Erised
  11. Epoch
  12. Froggin’ Bullfish
  13. Mile Zero
  14. Masamune
  15. Far Out
  16. The Heretic Anthem

2019年現在6枚あるオリジナルアルバムの中でも本作「Periphery Ⅱ」はミーシャのインターネット時代からの集大成と呼べるアルバムで、全16曲というかなりボリューミーな内容になっています。

現在のDjentミュージックを代表する本作はザクザクと歯切れのいいリフや不協和音がぶつかるアルペジオなど、まさにお手本と呼べるジャンルのイロハが揃ったメタルアンセム。ボーカルのソーテロのデスとクリーンの使い分けが見事でTriviumを彷彿とさせました。

#2「Have A Blast」ではガスリー・ゴーヴァン、#10「Erised」ではジョン・ペトルーシ、#13「Mile Zero」ではウェス・ハウクがそれぞれギターソロでゲスト参加。中でもガスリーのフュージョン系ソロはパワフルな楽曲と対を成すようなクールかつインテリジェンスなソロでめちゃくちゃかっこいいです!

なおこのバンドはトリプルギターなのですがジェイク・ボーウェンというギタリストはペトルーシの奥さんの甥です。インタビューで「伯父さんにギターを教えてもらった」と答えたその伯父さんがペトルーシだなんて羨ましすぎますね!笑

関口竜太

東京都出身。ギタリスト、音楽ライター。 ​14歳でギターを始め、高校卒業と同時にプロ・ギタリスト山口和也氏に師事。 ブログ「イメージは燃える朝焼け」、YouTube「せっちんミュージック」、プログレッシヴ・ロック・プロジェクト「Mind Over Matter」を展開中。2021年から『EURO-ROCK PRESS』にてライター業、書籍『PROG MUSIC Disc Guide』にも執筆にて参加。

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1件の返信

  1. 2018-07-17

    […] 新プログレメタル“Djent”。インフルエンサーと大衆が変えた言葉。 […]

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