日本のプログレ界に影響をもたらした歌手、カルメン・マキという“風”
こんにちは、ギタリストの関口です。
先日僕の企画するMOMaのお話をしたと思うんですが、日本産のプログレというのも確かに存在します。今日はその話をちらっとしようかなと思います。
日本のプログレ
Wikipediaで「日本のプログレッシブ・ロック・バンド」を調べると実に様々なバンドがでてきます。中にはMr.ChildrenやTHE ALFEEなど誰もが知るバンドもあれば凛として時雨のような2000年代以降に活躍したバンドも入っています。
もちろんこれらのバンドには少なからずプログレの要素やそれに準じた作品があるのです。その話はまた別でしたいと思っていますが、本格的なプログレバンドと言えば四人囃子、ゴダイゴ、人間椅子などが有名ですね。
日本の音楽シーンは昔からシングル曲がメインになっていてシングル曲と言えば大衆向けの歌番組で披露できる必要があり、コンパクトな傾向にあります。バラードで6分にもなれば世間一般では「長い」という認識になります。なので本来のプログレッシブ・ロックをやろうと意気込むバンドは必然的に表には出てこないというなんとも悲しい現実がそこにはあるのです。
そんな中、日本のプログレ界に一石を投じながらも多くの人にカバーされた女性アーティストがカルメン・マキです。
カルメン・マキ
カルメン・マキは1951年、アイルランドとユダヤの血を引くアメリカ人の父と、日本人の母との間に生まれます。1968年に歌手デビュー、紅白出場までま果たしますが、1971年になってロックミュージシャンへ転向します。
そんな彼女は1972年に、ギタリスト春日博文(RCサクセション)らと共にカルメン・マキ & OZを結成します。カルメン・マキの存在感たっぷりなボーカルにハードロックな曲調、メロトロンなどのプログレッシブな要素を取り込んだ前衛的なバンドで、当時事務所からキャバレー周りを強要された際には「こんな曲で踊れるか」とブーイングもあったそうです。
しかし1975年に日本のプログレ界に名を残す名曲が誕生します。
私は風 / カルメン・マキ & OZ
ジャケットの「片面」という時代を感じさせる表記からこれがシングルとして発売されたレコードというのは想像できます。問題はその曲。
11分39秒。まずはこれがこの曲の長さ。シングル曲のA面としてこの長さは日本ではなかなかありません。僕が知る限りだと陰陽座が2004年に出した「組曲義経〜夢魔炎上〜」が14分なのでこれに次ぐといった感じでしょうか。陰陽座のは組曲ですがこちらは単発。
陰陽珠玉
イントロから7拍子のリフが炸裂します。二転三転と展開を見せイントロだけで緩急つけながら1:50、ここでようやく歌です。シンプルなピアノにカルメン・マキの落ち着いたボーカルが乗ります。
しかし3:45、ここからがカルメン・マキ節と言えるハスキーでパワフルなロックボーカルの登場です。イントロであれだけ衝撃的な印象を与えながらそれに全く引けを取らない、むしろ引っ張るほどの存在感は圧巻です。
5分をすぎたころの間奏ではプログレらしい3連のギターソロから8ビートへ戻りオルガン〜ギターとソロの合戦。どうやらアドリブらしいのですが名演です。これで終わりかと思いきやその後も落ちては盛り上げという展開がありあっという間に12分弱を聴き切ってしまいます。
そしてこの「私は風」、様々なアーティストにカヴァーされたという実績も付いて来ます。もっとも有名なのは中森明菜ver。2003年にはB’z松本孝弘の「The Hit Parade」でもカヴァーされています(ボーカルは元GARNET CROWの中村由利)。
オリジナルのCD盤はベストがありますがここではアルバム「カルメン・マキ&OZ」を挙げておきます。Apple Musicで探しましたが今の所見つからず、iTunes Storeでは買えるようです。
松本孝弘「The Hit Parade」。ここではアレンジされ7分ほどまで短くなっています。
なお、OZ解散後も2003年にCARMEN MAKI & SALAMANDRE(カルメン・マキ&サラマンドラ)というバンドを結成、同名のアルバムをリリースしています。ここでも大作志向な楽曲にKing Crimsonのようなプログレを聴くことができます。